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「乾杯でもするか」
テツは言った。
「なんの乾杯よ」
ミトさんは言った。
「この偶然に?」
「模試が終わったからとかじゃなくて?」
「そうそう、模試が終わったことに」
「適当やな!」
セキさんが言い、みんなが笑った。
ぼくらはコーヒーカップを持ち、カップを軽く合わせて乾杯する。
「今回の、どうだった?」
セキさんが言う。
「まだ、去年の復習みたいなものだから、そこそこだとは思うんだけど」
ミトさんが言う。
「おれもまぁまぁだとおもう」
テツが言い、
「セキさんは、うまく出来た?」
と、続けた。
「うん。めっちゃできた。去年のじぶんよりはたぶんめっちゃできてた」
と、セキさんは言った。
「この子、ほんとに賢いんだから」
と、ミトさんは自分のことのようにうれしそうに言った。
「ごめん。うそうそ。次からのプレッシャーになるからやめて!」
と、セキさんはすこし早口に恥ずかしそうに言い、ミトさんは楽しそうに笑っていた。
「おれも教えてもらっとけばよかった」
と、ぼくが言うと、「まじでそれ」とテツも同意し、セキさんはかぶりを振り、「もう一回さっきの聞くところからやりなおしません?」と言って、ぼくらは笑った。
模試や授業の話から、テレビで流れる芸能人のニュースやバラエティ番組、最近聞いた音楽の話等、とりとめもなく話した。
最近あまりテレビ見れなくなったよね、とミトさんは言い、なんだか世間から取り残された感じがする、とセキさんは言った。
二人の皿の上のスコーンがなくなり、コーヒーカップの中身もほとんど尽きた頃、「あ、ちょっと本屋さんに寄ろうとおもっていたんだった」とセキさんは言い、
「参考書、みるんだったら矢村くんも来る?」
と、続けた。
「うん。せっかくだし」
ぼくは会話もまばらになり、解散しそうでしない雰囲気に退屈し始めていたので同意した。
カフェを出ると周囲のビルと同じような灰色の雲がうっすらと空を覆っていた。
暑くも寒くもなかったが、湿気が高く、じめじめとして、パーカーの中のシャツが汗ばんだ。
「あの二人、つきあってるからちょっと気を遣うよね」
セキさんは言い、「え、そうなの?」と、ぼくはすこし早口になって言った。




