表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
おなじ夢をみている  作者: メイツル
11/36

11

 彼女は白いワンピースを着て、机の上のコーヒーカップに手をかけたまま、こちらをみていた。

「あのう、すみません」

 ぼくは彼女の席の前までゆっくりと近づき、声にならない声で話しかけた。

 彼女はぼくをじっと見つめ、親しい友人に会ったときのように、やわらかく微笑んだ。

 彼女は口をぱくぱくとさせ、左手を前に伸ばし、椅子に座るよう促した。

 ぼくは彼女の正面の椅子に座る。

 彼女は外国の映画にでてくるような、目鼻立ちの整った顔立ちをしていた。年齢は年上にも年下にもみえ、よくわからない。彼女は口をぱくぱくとさせ、ぼくをじっと見た。それからまた口をぱくぱくとさせ、ぼくは曖昧に頷いた。彼女は立ちあがり、うす暗いカウンターに入っていった。躊躇なくカウンターに入る姿をみて、なんだかそわそわした。

 彼女がカウンターにいる間、ぼくは彼女のコーヒーカップを眺めた。白いコーヒーカップの上部にはクローバーや花の模様が描かれ、カップの中にはコーヒーがまだ半分ほど残っていた。

 ふと、夢のなかのコーヒーは飲めるのだろうか、と考えた。

 彼女のコーヒーカップを手元に寄せ、カップを持ち上げたとき、彼女のものを勝手に飲もうとしていたことに気が付き、躊躇した。

 カップを机の上に戻すと、カップの中の黒い液体がゆらゆら揺れた。

 ぼくは左ポケットに手をつっこみ、右のポケットにも手をつっこんだ。両方のポケットはからっぽで、これは夢なんだから勝手に飲んでもだいじょうぶだろうと思い、夢だからと傍若無人に振る舞えば、それは現実でも癖になり、要らぬトラブルのもとに繋がるのではとも考えて、彼女がここに戻って来るのを待つことにした。

 ぼくはじっとコーヒーカップの中を覗きこんだ。カップの中の黒い液体は現実と同じように液体っぽく揺れ、これまで液体の揺れ方など気にしたことはなかったが、ぼくの夢にしてはうまくできていると感心した。

 コーヒーの揺れは、時間が経つとおだやかにおさまりはじめた。揺れがおさまるにつれ、コーヒーカップの中に映る頭から鼻あたりまでの自分の顔が、次第にはっきりとみえてきた。

 揺れがおさまったとき、見覚えの無い、知らない顔がぼくを覗きこんでいた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ