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おなじ夢をみている  作者: メイツル
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 さいきん、よくおなじ夢をみている。

 だだっ広い砂漠にひとり、ただ佇んでいる夢。夢が覚め、狭いいつもの部屋の天井が見えると、あぁ、夢だったのかとただ気が付く。


「そんな夢みたいな話あるか」

 とテツは言い、

「だから夢なんだって」

 と、ぼくは言って笑いあう。

 予備校へ向かう道の途中、テツに砂漠の夢の話をした。

「勉強のしすぎだろ」

 とテツは言う。昨晩、布団のなかにテキストと携帯電話を持ち込み、勉強をはじめるつもりがぼんやりと携帯電話を眺めたまま眠り込んでしまったことを思い出し、もやもやと気まずい気持ちになりながら、「かもなぁ」と、ぼくはあやふやに答えた。


 むずかしい問題を解こうとするといつも眠くなる。

 うす暗い自習室はテキストのページをめくる音、かりかりと鉛筆をはしらせる音、それに混じりすこしの寝息がしずかに聞こえる。たまにいびきが聞こえることもあり、おおきないびきの時は入り口にいる係員がそっと肩を叩いて起こしに来る。

 予備校別館二階にあるこの自習室は、窓からの光は分厚い遮光カーテンで遮られ、道路を走る車の音もほとんど聞こえない。部屋はパーテーションで区切られた机が敷き詰められ、机にはスイッチ式のライトがひとつ置かれている。

 ぼくは部屋の端の窓側の席に座る。分厚い遮光カーテンで外は見えない。

 薄っぺらい英語のテキストを取りだし、まだほとんど白紙のノートを机に広げ、問題を解きにかかる。

 空は青くよく晴れ、まっしろな太陽は砂漠をじりじりと照らしている。足元には風と砂でつくられたきれいな風紋が広がり、でこぼことした砂丘にはくっきりとした陰影がついている。

 ぼくは歩き、砂丘の影に腰をおろす。

 目を開けると、英単語がすこしだけ書き込まれたノートが見えた。ポケットから携帯電話を取りだし、時刻を確認する。正午をすこし過ぎていて、食堂にはそろそろテツがいる頃だろうとおもった。

 机の上の荷物をリュックサックにしまい、のそのそと席を立ち、自習室をみるとまばらに人が減っていた。入り口の係員は椅子に腰かけ、机の上に開いた文庫本をじっと読んでいる。入り口まで歩き、外へ出るときも係員はぼくにはすこしも目もくれず、仏頂面で文庫本をみていた。

 明るいフロアに出て、ぼくはちいさく伸びをして、リュックサックを背負いなおしながら、たぶんいびきはかいていなかったのだろうとおもった。

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