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夏の暑さも少しずつおさまり、朝夜は少し肌寒さを感じるようになってきた
最近は季節の変わり目が曖昧で、夏がいつまでもダラダラと長引き気がつくといつの間にか冬の匂いを感じるなんてのも珍しくなくなってきた
1、2ヶ月で何かが変わるような事もなく通勤スタイルが半袖から薄手の長袖になったくらいで、ただ変わらない毎日を無駄に消化していく
「おはよ、、?あれ佐藤さんなんか怒ってんの?」
いつもと変わらず周りとは違う混み合うバスに乗る為に爽と2人バスを待っていた。
「、、、おはよう。」
「あらぁなんかめっちゃ話しかけんなってオーラ出してますねー」
季節的に長袖の人の方が多くなってきたのにいまだにタンクトップにハーフパンツの爽だが、俺の不機嫌さバリバリの雰囲気に困った顔をしている。
「あー、すまん。ちょっと朝から色々あってさ」
「どしたの?枕の加齢臭に気づいて凹んだの?それとも枕に残った抜け毛に凹んだの?」
「なんで両方枕絡みなんだよ、加齢臭も抜け毛もまだないわ!」
どうやら困った顔に見えたのは幻覚だったようだ。俺の不機嫌さなど眼中にないのかこいつは。
「違うのか、、、。あ、わかった!シロのエサ入れ忘れてシロに怒られたんだな」
なんだ?こいつもエスパーなのか?
「なんで知ってんの、お前もしかしてストーカーなの?33のおっさんのストーカーとか終わってんなお前」
「ストーカーじゃねぇし!てかネコに怒られる33の方が終わってんな!」
「瑠美の尻に敷かれまくってるお前の将来も知れてるけどな!」
「おー、朝っぱらからなんともアホな言い合いしてんなお前ら」
季節感ゼロの21歳とネコに謝罪する33歳の低レベルな言い合いに割り込むように後ろから声がする
「ん?爽今なんか言った?」
「いや俺何も言ってないよ?んで何も聞こえてない」
「あー、空耳か。お、そろそろバスも来るな」
「おい、お前らあからさま過ぎんだろ」
ふいに右に体を避ける
ゴツッ
「痛ッ!孝之さんいきなりグーパンはひどいっすよ!」
後ろからの攻撃を華麗に避け、攻撃対象を爽に移した結果俺より背の低い爽のおでこにパンチがヒットする
「剛士お前避けんなよ!」
「後ろからいきなり殴ろうとする孝之が悪い」
大島孝之35歳爽の上司であり剛士の悪友
パーマを当てた長めの髪を頭頂部辺りで括り35歳には見えないチャラさ全開の格好をしている
「てか孝之さんがバスとか珍しいっすね」
「あぁ、昨日侑里と喧嘩してあいつ出てったんだよ。んで足ないし、しょうがなくバスでって感じかな」
「お前も懲りんな、どうせまた他の女手出したのバレたんだろ。侑里ちゃんもいい加減こんな奴見限ったらいいのに」
「まぁすぐ帰ってくると思うけどな、てかそうゆうわけで侑里もいないし今日仕事終わったら飲み行こうぜ」
反省のはの字も感じさせない孝之にまぁいつもの事だしなと呆れる事も馬鹿らしくなる
「あぁ俺は別に何もないし、むしろ今日飲みたかったしいいよ。爽はどうする?」
「んー、俺は今日は遠慮しときます。二人と飲みに行ったらどうせ朝まで確定だろうし」
「んじゃ男2人ってのも味気ないし誰か他に誘っとくか」
こいつは本当に懲りてないな。
「お前ケンカしたばっかならさすがに今日くらい自重しとけよ。secretだったら浩一郎もいるしたまには男だけでもいいだろ」
「んー、まぁそうだな。secretだったら女の客もいるだろうし」
こりゃ何言っても無駄だな。
「もういいや、んじゃ終わったらそのままsecretで合流な」
一応こんなチャラさ全開の男でも爽の上司でもありそれなりに仕事を抱えてる為就業時間は俺よりも長い。
「はいよ!んじゃさっさと仕事終わらせてセッティングしとくわ!」
ん?なんか違和感を感じる返答だったがちょうどバスが来た事もありそのまま曖昧に返事をし、仕事に向かった。