7
遊んでくれる子供がいなくなったブランコが風に揺られている
夏の終わりを告げるようにトンボが群れて飛んでいる
公園の外側には帰宅の途につく人々
夕焼けが人々の影を長くする
ふと無人だった公園に人の気配を感じそちらに視線をうつす
公園の隅でうずくまるその子供
地面に絵でも書いているのか
それともただそこにうずくまっているだけなのか
少し離れた場所からの視点でよくわからない
不意に声が響いてくる
それはところどころ途切れていてよく聞こえない
『、、い!、、し、、おう、、!また、、か、たい、、か!!』
声が響いてくるのと同時にうずくまるその子は跳ねるように起き上がる
そのまま公園の外へと駆けていく
少し足を引き摺るようにして
『、、、ッ!、、、!!』
何か叫ぶような怒鳴るような声が響いているのだが内容までは聞き取れない
『~~!、、、痛い、、!痛い、、、』
痛い?さっきの子供の声だろうか、内容はほとんど聞き取れないが声の感じから子供だと判断する
声のする方へ視線を移すが何故かフェンスの外側は真っ暗で何も見えなかった
そして誰もいなくなった公園に黒い小さな影が端の方から現れる
『ニャアアアン!』
、、、シロ?
『ニャァ!!ニャー!』
不意にお腹に衝撃を感じた
「ニャァ」
グルグルと喉を鳴らし顔にシロが擦り寄ってくる
「あぁおはよう」
首の辺りに尻尾を絡ませてくるのをくすぐったく感じ目を覚ます
シロを抱きかかえ起き上がる
「ニャァ!」
シロは嫌がるようにベッドの下に飛び降りる
シロの姿を追いかけるとなぜかエサ入れがベッドの下にある
「ニャァ!!」
シロが前足でエサ入れを小突きながら鳴く
「あ!ごめん!昨日ご飯入れてなかった!?」
急いでエサを出してきてエサ入れへと入れる
行儀よく座って待つシロだが、エサを入れ終わっても食べようとしない
「あれ?エサじゃなかった?」
「ニャァ、ニャニャァ!」
何か言ってるのか?
「ニャァ、ニャニャァ!」
ッ!
「エサ入れ忘れてすみませんでした、どうぞお食べ下さい」
「ニャ!」
謝罪に満足したのかエサを食べ始めるシロ
ネコに謝る33歳
朝っぱらから何ともシュールな光景を繰り広げる
何してんだ俺などと考えてるとスマホが着信を知らせる
画面には意外な人物の名が表示される
『菜美』
少しそのまま画面を見つめたまま考える
三年前に別れた人
別れてから1度たりとも連絡などなかったのに今になって何の用なんだ
別れた原因も複雑で少なからず良い思いは抱いていない
そんな思いもあって電話をとるか迷っていると着信は切れてしまう
「今さらなんの電話だよ」
スマホをベッドに放り投げる
勢い余ってベッドでバウンドしたスマホは床に盛大に床に落ちる
「あぁくそ!朝からイライラすんな!」
さっきまでシロと繰り広げたほのぼのした雰囲気が元嫁の着信により一気に消え去る
床に落ちたスマホから起床を知らせるアラームが鳴り響きイライラが収まらないまま仕事の準備を始める
そのままシャワーを浴びに行った剛士はアラームと同時にメッセージを受信した事には気づかなかった