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最近よく夢を見る。
シチュエーションは様々なんだが、決まって同じ人物が登場する。同じ人物が登場すると言ったが、その人物には全く見覚えがない。だが夢特有の前提が決まってる状況で、夢の中では知らない人とは感じないのだが。
スマホのアラームが鳴る。
6時20分。
夢から醒め、夢特有の前提から抜け出しやっぱり知らない女性。
山村愛梨
名前を聞いたわけじゃないがやっぱりこれも知ってる前提がある。
夢の中では知っているがこの名前にも全く聞き覚えがなかった。
目覚めたばかりの微睡みの中頭の中を?が埋め尽くす。決して嫌な感じではない。むしろ自分の好みのタイプ過ぎて夢なのが悔しいくらいだ。
エアコンが効きすぎてるくらいの部屋のベッドの甘い誘惑から抜け出し仕事に行く準備を始める。
佐藤剛士。33歳バツイチ、3年前に離婚をし今はペットの猫と1人+一匹暮らしである。
剛士が勤めるのは地元の大企業有する工場。派遣社員だが、派遣先が成長中の大企業であるのでそこまで気後れはない。
元々は飲食店で働いていたが、離婚を機に転職をした。年齢も30を超え、資格等もないとそうそう仕事なんか選べるわけもなく交替勤務の工場へとたどり着いたわけだ。
いつも通り7時25分のバスに乗るため家を出る。駅にあるバス停だがそこまで都会ではない為朝の通勤ラッシュの光景などない。
それでも工場に向かうバスだけは工場が大きいせいもあり異常な混雑ぶりを見せるのだが。
「爽、おはよう」
「あ、佐藤さんおはよう」
いつも通りの光景にいつも通りの人物。
川崎爽。
黒のタンクトップにデニムのハーフパンツ、夏をこれでもかってくらいに表す服装で、名前の通り爽やかに挨拶をしてくる。
年は21歳で一回り年下だが後輩ではなく同僚、むしろ正規の社員なので立場的には上になる。
「佐藤さん今日定時?どこ飯行く?」
「あー、別にどこでもいいよ」
「んじゃあっこ行こ!あの丸って焼肉屋!」
毎月給料日に爽と飯に行くのが恒例となっている。ちなみに飲み行く?じゃなくて飯行く?って言うのは爽が全く飲めないからだ。
「丸?あぁ、この前行ったとこ?お前どんだけ肉ばっかなんだよ。」
「やっぱり夏は肉食ってなんぼ!っていうじゃん?んじゃ今日は焼肉ってことで!」
言わないけどな、とは言わずに呆れる。
そんな会話をしてるとバスが来て、並んでる人にならい混雑するバスに乗り込んだ。