荷造り
家に入ると早速準備に追われた
「あまり大きな荷物は
馬の負担になってしまうので
これくらいの鞄でいいでしょう」
神父さんが指差す鞄は
普段持ち歩いている
母が作ってくれた斜めがけタイプの鞄だ
「洋服は、馬に乗りますので
出来れば動きやすそうなものを…」
神父さんも気づいたようだが
私は本格的な農作業をせず過ごしているので
基本ワンピースばかりだった
「うーん…どうしましょう
私、スカートしか持っていなくて…」
そんな会話をしていたら
家の扉が、バーーーンと開いた
「アリア!どういう事よ
あんた!王子様と旅とか!
何であんたばっかり!」
ぽかーん
すごい勢いでやってきて
わめき散らしていたのは
村長の娘だった
驚きのあまり静止していると
先に復活した神父さんが
「女の子同士のお話もありましょう
何か役立つものがあるか
教会に取りに行きますので
あまり時間はないですが
最後にお話ししてはいかがですか?」
そう言うと
神父さんは出て行ってしまった
(ええぇ…置いていかないで…)
「えーっと
何か勘違いしているようですが…
私、神様の生け贄になるんですよ?
あと、王族の方が来るそうですが
王子様かどうかは知りませんし…」
「あら、そうなの?
王族=王子と勝手に思ってたわ
まぁ生け贄って言ったって
気に入られて神様と
結婚できるかもしれないし
旅の途中に王子様に
見初められるかもしれない!
だから私が乙女になりたかったのにっ」
(すごい想像力だわ…)
「まぁいいわ
これ、あなたにあげるわ
ありがたいと思ったら
ちゃんと独り身のまま戻ってきなさい!
あなただけ幸せになるとか
許さないわよ!」
そう言うと
何か私に押しつけて走り去っていった
「嵐のような人ねぇ…」
押し付けられたものを広げてみたら
騎乗用の服だった
(心配…してくれたんだ
いつもあんな態度なのに…
結構いい子なのかもしれない)
何だか心がぽかぽかしてきた所に
神父さんが戻ってきた
「お待たせしました
おや、ちょうどいい服があったのですね
それなら危なくなく乗れますね」
「はい!
あとは何を持って行けば?」
「食事などもたぶん
用意はしていただけると思うのですが
念のため、これをどうぞ」
「ドライフルーツ?」
「栄養価も高い果物で作ったので
神殿までならこのくらいで足りるでしょう
女性は甘いものの好きな方が多いですし」
「はい!私も甘いもの大好きです!」
それはよかったと微笑みながら
荷造りを二人で終わらせた…