家の心配
「まさか、私の赴任中に
こんなことが起きるとは
思いませんでした」
悲しそうに微笑む神父さん
「私も、他人事のように思えて…
なんだかまだ…
ぼーっとしてるみたいです」
私は素直に気持ちを伝えると
「ええ…それでいいんですよ
焦らず、穏やかにいてください
それでは私の役目を果たしましょう
これから神殿に行っていただくのですが
ここから神殿までは馬でも2日かかります
途中、リアンの街で1泊
その後神殿まで寄り道せず向かって下さい
古くからの決まりにより
王族の方が一緒に行くことになります
ですが、緊急を要するため
少人数での強行軍になるでしょう…
アリアさんは馬などに乗ったことは?」
(王族?!)
まさかの事態にアワアワしながら
「えっと~1度乗せてもらったことは…
自分では乗れないです…」
うつむきながら答えると
「ああ、大丈夫ですよ?
同乗させてもらえばいいのです
問題は…体の方かと…
乗り慣れない上に強行軍では
きっと大変なことになりますね…
そうだ!これをお持ち下さい」
なにやら丸い入れ物に入った物を渡される
「これは?なんですか?」
「私が作った物なのですが
切り傷、虫さされなど
色々なものに効きますよ
きっとお役に立つと思います
さてでは旅の準備をしましょう
ご自宅にご一緒してもよろしいですか?」
「はい、旅なれてませんし…
なんだかぼーっとして
色々忘れてしまいそうなので
来ていただけると助かります」
ぺこっとお辞儀する私を見て
神父さんはにっこりと微笑み
一緒に我が家へ向かうのだった…
歩きながら神父さんに
一番気になったことを聞いてみる
「あ、あのっ」
「はい?どうかしましたか?」
「わ、わたし食べられちゃうんでしょうか?
生け贄なので…
そうなっても仕方がないのですが…
そうすると家は
どうなっちゃうのでしょう?
死んでしまえばどうなっても
しょうがないですが…
もし!戻れても家がなくなってたら困ります…」
「そうですね…うーん
正直、誰もどうなるのか分からないのです
私の方から村長に言っておきましょう
5年戻らなければ好きにしていい
というのはどうでしょう?
さすがに5年以上は
家が保たないと思いますし…
人が住まないと家ってすぐに
駄目になっちゃうんですよ
なので、大事なものは持って行くか
どなたかに託していった方がよいでしょう」
「わかりました、ありがとうございます」
帰ってこれるかもしれないという
わずかな希望を胸に我が家に入って
準備を始めるのだった