急ぎの理由
旅立った最初はよかった
馬に乗りなれない私のために
ゆっくりだった足並みが
今や駆け足?競走馬?!ってくらい
必死にしがみついて
何とか村まで着いたのはいいが
止まって初めて気づいた
(お、お尻痛い…
足も腕も動かせない位痛い
う、動けない…どうしよう…)
アワアワしていたら
一緒に乗っていたジル様が
先に降り、私を抱えて宿に向かってくれた
「体がつらいでしょう?
すみません
こちらの都合で急がせていただきました」
ベッドに置かれた私に
アル様が申し訳なさそうに言っている
「いえ、こちらこそすみません
馬に乗り慣れていないせいで
お時間をとらせてしまって…
あの、お伺いしてもよろしいでしょうか?
アル様とジル様がお急ぎになる理由は…」
アル様のお顔が辛そうに歪むのをみて
「ちょっと気になっただけなので
話したくなければいいんです!
すみませんでした!」
立ち上がれない私は
ベッドに座ったまま頭を下げた
「いいえ
こんなに無理をさせてしまっているのです
あなたには知る権利がある
本当に私事で申し訳ないのだが
妹が病にかかってしまったんだ…
今回の災害とは関係ないかもしれない
あなたを神に捧げても
治らないかもしれない…
それでも!じっとしていられず
君の同行者に立候補したんだ…
君の命を差し出そうとしているのに
身内の命ばかり助けようとしているなんて
私は汚い人間なんだ…
スマナイ…」
そのまま俯いてしまったアル様の肩を
ジル様がそっと叩いて
励ますようにしていた
(だから1分1秒無駄にしたくなかったのね…)
「では、明日は早く出発いたしましょう!
宿の方にも早起きしていただいて
食事を取らせていただけるように
手配して……(動けない;)
いただいてもよろしいでしょうか…」
驚いた顔で顔を上げたアル様が
「そんな動けないくらい
体が辛いっていうのに…君は…
私を怒って恨んでくれた方が
楽だったかな…
さすが神に選ばれた方だ」
「え、あ、当たり前のことですよ
自分の家族を助けたいって
私だってそうしたと思います
それに、私が生け贄になるのには
変わりないですし
だから気にしないで下さい」
「ありがとう
食事の手配はこちらでするよ
明日には多少動けるだろうから
体を清めたいだろうし
お湯も用意して貰おう
選ばれたのが君でよかった」
ひぃーやぁーーーっていう
会心の笑顔を振りまいてくれました
「さあ、さっさと寝るぞ
起きなかったら馬に縛って乗っけてくぞ」
自分でも分かるくらい赤面した私を見て
ニコニコするアル様に
ジル様が呆れた声で言った
「はい!おやすみなさいませ」
恥ずかしさとジル様の圧力を受け
急いで布団をかぶって寝るのだった