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セイグランド剣術指導部

―歓声があがる。


ここはセイグランド王国の剣術指導所。10000人程が入るこの場所の真ん中には、二人の青年がいた。一人の赤髪の青年は立ち上がり歓声に答えている。一人の黒髪の青年はしゃがみ込み、もう一人の青年を眺めていた。


―ここに世界剣術技術、優勝者が決定した。



扉が乱暴に開き、黒髪の青年が出て来る。


「くそ!油断していた」


僕の名前はガルス=ルイック17才。身長168センチ、体重50キロ、貴族である誇り高きルイック家に生まれ、なに不自由ない暮らしをしてきた。幼い頃から剣術の指導を受け、天才的才能で剣術を覚え、今は若くしてセイグランド王国剣術指導部に所属している。

顔も良いし、金もある。だが剣術はそれらのなによりも自信があった。ということで僕の剣術の実力を他人に見せるべく、世界剣術技術大会に出て圧倒的力で決勝へと勝ち上がった。参加者は約1000人。その中で勝ち上がったというのは素晴らしい功績といえる。まあ…僕なら当然の結果なのだがな。


それなのに…


僕はイライラを押さえるためにセイグランド城を出て近くの広場に来た。

…そこには、忘れもしない、剣術技術大会優勝者の顔があった。僕より一回り身長が大きい。長髪の赤髪を風になびかせ煙草を吸っている。とてもじゃないが成年には見えないな。名前は確かクラス…なんだったかな?とにかく僕はそいつに話しかけることにした。


「おい、大会決勝で戦ったものだ。名をなんという。」


クラスはぼーっとした顔で答える。


「ああ、お前か。名前はガルス=ルイックだっけ?俺の名前はクラス=デクリスだ。」


そうだ、デクリスだ。デクリス家なんて聞いたことがない。ルイック家より下級であることはわかる。それより…


「お前、年齢は?」


「17才」


僕と同い年なのか、ならば煙草を吸うのは法律違反だ。


「未成年が煙草を吸うものじゃない。それにここの広場は禁煙地域だ。」


僕はクラスの口から煙草を取り上げる。すると近くを通りがかった掃除員が


「こら!ここの広場は禁煙だ!それにあんた未成年だろう。煙草を捨てなさい!」


「………。」


「ははは、ここは禁煙地域だそうだ。煙草を捨てろ、未成年。」


にやけながらクラスはそう言った。殺してやろうかこの犯罪者が。そんなことよりも、この僕がこんな奴に剣術で負けたことが気に入らない。こいつの剣術は基本的かまえはなっていないが、見事なものだった。


「クラス、お前も幼い頃から剣術の指導を受けていたのか?」


「いや、俺は田舎で暮らしてて獣を狩って生活していたんだ。だから剣を使うのは慣れているんだ。セイグランド王国の兵士になりたかったからセイグランドの大会に出て、剣術を陛下に認めてもらおうとしたんだ。そうしたら優勝しちゃった。」


優勝しちゃっただと?なめてんのかコイツ。というより優勝者には大会終了後の表彰があるはずだ。行かなくていいのか?


それを聞いたクラスは急に焦った顔になって


「いっけね!忘れてた!じゃあなガルス。未成年なんだから煙草はいけないぜ。」


そう言い残し去っていった。最後までむかつく奴。…さて、僕は剣術指導部の仕事を遂行しなくては。イライラが増したがしょうがない。今日も自分より年上が多い兵士達の指導に勤めよう。


「クラスか…。」


もう会うこともないだろう。ていうか会いたくない。剣術は素晴らしいが性格に難ありの犯罪者だ。


もう会うこともないと僕は思っていた。この時はまだ…。



……冗談だろ?


あの大会から次の日、僕は信じられない光景を目にした。

ここは剣術指導場。

毎日僕はここに兵士達の剣術指導をしに来る。とても広く、様々な設備があり、武具等も揃っている素晴らしい指導場だ。大会もここで行われた。さすがは武闘国セイグランド。兵士達の剣術は他の国を圧倒している。そして、今日も僕はいつものように兵士達の剣術指導をしにきたわけだ。そこには1000を越える兵士達と


その兵士達を指導するクラスの姿があった…。


近くにいた上級兵士にクラスを指差し尋ねる。


「おい、あいつはなんなんだ?」


「聞いていませんか?今日から剣術指導部に配属された剣術技術大会優勝者のクラス殿です。ガルス殿と決勝で戦った方ですよ。」


そんなことはわかっている。なぜあいつが剣術指導部に所属された?あいつはセイグランド兵士になりたかったんじゃないのか?


「はて…?詳しいことはわかりかねます。」

僕はクラスのところまで向かうと、クラスは僕に気がつきこう言った。


「お、ガルスじゃないか。今日から剣術指導部に配属されたぜ。これからよろしくな!」


どうでもいいが声がうるさい。


「これからよろしくな!じゃない。どうしてお前が剣術指導部に所属された?お前はセイグランドの兵士を目指していたんじゃないのか?」


「それがさー、陛下が俺の剣術を認めてくれたのはよかったんだけど、過剰評価ってやつ?剣術指導部に所属して兵士達の指導を願いたいとか言ってさー。なっちゃった。」


なんという…。


僕は絶望した。

剣術の腕は認めよう。

なぜなら大会上世界一なのだから。

僕よりも剣術としては上なのは認めてやろう。(認めたくはないがな。)しかしだな、僕とこいつは性格が合わないんだ。生理的に嫌というやつだ。同じ仕事場でこんな奴と一緒に仕事をするなんて…。それに僕はまだ大会優勝が出来なかったことを忘れてはいない。こいつと会うたびにあの悔しさを思い出してしまうじゃないか…。

僕がうつむき黙っていると、クラスはむかつくほどのさわやかな笑顔で僕に言った。


「なんだよ、暗い顔しちゃって?俺は嬉しいぜ?知っている奴が同じ剣術指導部にいることが。頼もしい限りだ!まあ、剣術は大会上俺の方が上なんだけどね。」


最後の言葉が僕の胸に突き刺さる。やっぱり無理だ。こいつとの剣術指導なんて、無理だ。

そんなことを思っていると、剣術指導場にサイレンが鳴った。クラスはなんだなんだ?と驚いている。このサイレンが鳴ったということは、魔物がセイグランドに現れたのか他国の兵士が乗り込んできたかだ。他国との付き合いはセイグランドは良いので、きっと魔物が入り込んできたのだろう。と思っているとスピーカーから声が聞こえてきた。


「剣術指導場の者に伝える。上級兵士はただちにセイグランド広場に向かうこと。巨大な魔物が広場に侵入。剣術指導部も戦闘に加入すること。」


セイグランド広場とは、昨日僕とクラスが会った場所だ。スピーカーは繰り返すとか言ってるが急がなくては。僕はまず兵士達に命令する。


「上級兵士はただちに広場へ向かえ!僕とクラスもすぐに向かう。下級兵士と中級兵士はここで待機し、すぐに動けるよう準備していろ!」


はっ!と約1000人の兵士の返答が聞こえるとクラスは僕にこう言った。

「敵か?さっそく敵なのか?巨大な魔物って言ってたぞ?つまり、暴れてもいいんだよな?」


僕はクラスに行くぞ。と言い広場へ走りながらこう言った。


「好きにしろ。」


―広場に着くと上級兵士達が魔物と戦っていた。魔物の体長は8メートルほどでドラゴンの一種だろう。見るからに凶暴そうである。広場はとても広い、そして草木で囲まれているので、こいつが火を吐くならやっかいだな。


「おい、あいつを倒せばいいんだろ?早くしねーと大変なことになるぞ?」


クラスの目は今まで見たことがないほど真剣だった。


「ああ、いくぞ!」


僕達は剣を抜き魔物へと向かった。

魔物はとても凶暴で尻尾をふるたびにたくさんの兵士が飛んでいく。


「油断するなよ。なめてかかると命が飛ぶからな。」


クラスはわかってると小声で言うと魔物に剣を向けた。クラスは剣を振りかぶり魔物に攻撃をする。僕も参戦だ!


「波動斬!」


僕の剣がオーラで包まれそのオーラが形を剣のように変え、魔物の方へ飛び突き刺さる。剣術としての基本の技だ。

魔物からはおびただしい血が流れるが、まったく堪えない。


「雷神衝撃波!」


クラスは剣を地面に突き立てるとその剣から雷が発生し魔物へと襲いかかる。

これは驚いた。こいつは魔術を使えるのか。僕も瞬間魔術くらいは使える。上級兵士が邪魔だ。僕達だけで十分だろう。


「上級兵士は戦闘から外れろ!城に向かいセイグランド兵士の魔術部隊を呼んでこい!」


はっ!と上級兵士達は言い、広場を離れ城へ向かった。


「僕とお前の二人だけだ。魔術部隊が来るまでに終わらせるぞ。」


クラスは攻撃をしながら答える。


「ああ、大会優勝者と準優勝者のプライドにかけてな!」


…なんかむかつく。


「幻影双竜撃!」


僕の剣の先から二匹の竜の幻影が現れドラゴンに攻撃をする。ドラゴンは大分弱ったようだ。動きが鈍くなっている。もうすぐ倒せそうだ。とどめを刺そうとしているのかクラスは魔術を唱え始めた。

するとドラゴンはクラスに向かい、刺さると絶対に危ないような爪を振りかぶる。クラスはというと…気がついてない!


「気付けよ馬鹿!」


僕はクラスの前へと走り、瞬間守備魔術を唱える


「魔法壁!」


僕の手に魔法陣が現れ、ドラゴンの攻撃を防いだ。魔術は苦手なんだ。精神を使うからな。


「雷豪魔襲爪!」


クラスの剣から雷が発生し、爪の形をした雷となりドラゴンを襲う。


ドラゴンは凄まじい悲鳴を発し、広場に倒れこんだ。


「終わりか…。」


僕は地面に座り込む。巨大なドラゴンは一筋の光となり消えていった。やっぱり魔術は嫌いだ。少しの時間で使う力が大き過ぎる。


「大丈夫かガルス?危ないとこ助けてくれてサンキューな。」


クラスはそう言うと僕の横に座り込み煙草を吸い始めた。


「ふー疲れた疲れた。お前の剣術見事だったよ。今度俺にも少し剣術教えてくれよ。」


僕は一仕事終えた顔で煙草を吸う犯罪者にこう言った。


「ここは禁煙地域だ。それに未成年は煙草を吸うものではない。この犯罪者が。」


僕達は笑った。


同じ剣術指導部として、なんとかやっていけそうだと思った。


少しだけな



勢いで書いた作品です。短編というのは続きを書くのがめんどくさいだけなので、続きを書く気分になったら続きを書くかもしれませんf^_^;

感想や評価を頂けたら幸いですm(_ _)m

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