仕事はつらいよ!間皇の巣立ち
本編とは関係ありません。
『仕事はつらいよシリーズ』
シリーズ?大丈夫か?
皆さんこんにちは間皇 海斗です。
引っ越し屋の仕事に転移魔法の調査と色々忙しいこの頃です。
実は俺が此方の世界に来たばかりで右も左も分からない状況の中、戸惑いつつも初出社となり、色んな状況にもめげず一生懸命仕事をこなしていく、今回はそんなお話しです。
「何処だ、奴等どこ行った」
「探せー、おりゃー。手足引きちぎっても俺ん所に連れてこいやー」
・
・
・
・
・
「行ったか?」
俺は今、アルバイトと呼ばれる正規の仕事ではない働き口で、これまた正規ではない仕事を生業としている。只今絶賛仕事中。
今、俺が持っている物をある所まで運んでいる最中だ。
何が入っているかは分からない。
いつもの事と隣にいる男が笑顔で答える。とても爽やかな笑顔だ。
大きなゴミ箱に二人揃って両膝抱えて潜んでいる状況でなければもっと素敵に見えたはずだ。
@
俺にはとても切実な問題が発生している。
この世界に住む場所を確保出来たのは嬉しく思うが正直金が無い。 いつまでもこのままって訳にはいかないので、この間助けてくれたあの怪しいお爺さんの虎二さんに相談してみる。
虎二さん以外に相談できる人が俺にはまだいなかった。
相談に行くとあっさり仕事を紹介してくれた。
今日から早速仕事があるらしい。
虎二さんの案内で会社に着いた。
簡単な面接だけで採用となった。
虎二さんの紹介だから安心できると会社の人は言っていた。
俺からするとずいぶん怪しい人に見えるんだが。
付き合いの差だろうか?
虎二さんも帰り目の前には会社の人がいる。
この人は御子柴さんというらしい。
早速仕事の話しをするようだ。だが、
「簡単な仕事だから。何回かこなせば直ぐに慣れるよ」
終始こんな感じだった。仕事内容を聞きたかったんだが。
だが今日の仕事を確認していると御子柴さんの顔が少し曇ったような気がする。
「しょっぱなから特殊案件か」と呟く。
俺は何をやるのか全く分からないまま不安そうにしていると、
「よし、行くか」と、
全く気にした様子も無く笑顔で返された。
細かい事は全く気にしない性格のようだ。
俺の中の不安が更に広がった。
仕事内容はブリーフィングと呼ばれ皆が集まった所で行われた。
その際に俺も皆に紹介され笑顔で迎えられた。
そこで一つ重要な発見をした。
先程面接をしてもらった御子柴さんはこの会社の社長だった。
仕事内容よりその事実が一番の驚きだった。
さて、今回の仕事の内容は A 地点でブツと呼ばれる何かを回収し B 地点にお届け。 C 地点からヤクザ様御一行を最低十五名引き連れたまま D 地点まで決して捕まらず騒がず速やかにご案内する事。何故十五名なのだろうか。社員旅行なら全員連れてってあげればいいのに。ヤクザ様御一行は総勢四十名らしい。
御子柴さんが言うには『案内時には気を付けろ。時々十五名の所、三十名以上ついてくる時がある。』との事。
皆と一緒の旅行は誰もが楽しみにしている事で、流行る気持ちが押さえられずに走り出してしまうのだろう。
その気持ちは分かる。
ヤクザ様御一行の気持ちをくみ取り、全員ご案内する事に決めた。
早速御子柴さんに相談だ。
御子柴さんから其処まで頑張らなくていいと言われ何故だが暖かい目で見つめられ、肩をポンポンと叩かれ缶ジュース二本くれた。
努力賞だろうか?まだ何もしてないが。
@
俺は今 D 地点に向かって走っている。
ヤクザ様御一行もちゃんとついて来ている。
総勢二十八人。皆顔が厳つい。
だが見た目で判断してはいけない。
魔獣も見た目とは違い非常に狂暴な奴もいた。
この人達はなかなか陽気な人みたいだ。
御子柴さんに言われた通りやったら皆叫び声を上げてついて来た。
やっぱり皆旅行が楽しみみたいだ。
よ~し皆で今日の宿まで競争だ。
俺は時々振り返り案内をする。
「皆さん、こちらですよ。静かになるべく速くお願いしますね」
そうすると何故か更に叫びだす。
もう待ちきれないみたいだ。
「こんガキャア、までやボゲェ。ハァハァハァ」
「ごりょじゅぅでやっがらな、ハァハァハァ」
「まじでまで~、ウェェェッ」
皆、教養があるらしく今の俺には彼らが何を言っているのかほとんど理解出来ない。
若干吐き気を催して者もいるが隣にいる同僚から『嬉しさのあまりむせび泣いている』と教えられた。
不覚にも俺も泣きそうになってしまった。
俺達は無事ヤクザ様御一行を宿にご案内出来た。
しかしここは何処だ。宿には見えないが。
同僚に確認すると、ここから別の場所にある宿まで特別なお迎えが来るみたいだ。
俺達の仕事はここまでらしく、さっさと撤収させられた。
後日彼らの事を御子柴さんに聞きにいった。
「あ~大丈夫、大丈夫。今は別の所で長期休暇とってっから」
そう言われた。
心配なら宿の写真見せようかと一冊の本を見せられた。
そこには頑丈な壁に囲まれあまつさえ鉄格子まで付いてる、立派な建物が写っていた。
俺はこれなら安心して休めるなと思いほっと胸を撫で下ろす。
初めての仕事なので出来れば最後まで確認したかったのだ。
御子柴さんに礼を言い俺は今日も仕事に満身するのだった。