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夏です。猛暑処により極寒。

だいぶ日が開いてしまい、大変申し訳ありませんでした。週一での更新を続けたいのですが、予定がたてられない状態です。ですので、これからは不定期更新となります。本当に申し訳ありません。どうか御理解下さいますよう、お願い致します。

 「ただいま」と、


 七瀬が屋敷に帰ってきた。

 奥からはエプロン姿のナナリーが笑顔で出迎えに。


 「お帰りなさい、七瀬さん」


 ナナリーのエプロン姿を目にした瞬間、七瀬の目尻が下がりニヤけた表情に。

 仕方ないよね。

 だって、猫耳つけた美女がエプロン姿で『お帰りなさい』だよ。

 17歳の健全な高校生なら、その後の事も想像したりするだろ。

 何をって……そりゃ、あの、その…………何かだよ。

 七瀬は顔を赤らめながらナナリーを見つめ、ナナリーはエプロンの端をいじりながらモジモジとしている。


 「ゴホン」


 二人ははっとなり、二人の世界から現実に帰ってくる。

 二人の側には館内を警備する革鎧を着けた女性が、二人から態と目線をずらす様に立っていた。

 警備の女性はまたかと言う表情でこの場から去っていく。

 どうやらこの屋敷では日常的な光景らしい。


 七瀬は、久々にナナリーと夕食を共にしていた。


 「ナナリー。後で相談があるんだけどいいかな?」


 「相談、ですか?」


 ナナリーは頭上に『?』を浮かべ、頭を傾けている。

 その仕種は幼子の様に愛らしかった。


 ここ、アスベルトの街は、七瀬の思惑により再度大きな転換期を迎えようとしていた。




            @



 日本では、春から夏へと季節も変わり、毎日茹だる様な暑さが続いている。

 ここは、天神荘201号室。


 「暑い」


 「そうですね。魔王様」


 リゼルは海斗の呟きに背中越しに答える。

 コンロの前で、ソーメンを茹でている最中である。

 本来であれば、その呟きはリゼルが発するべきものであるが、呟いた当人は畳みに寝転び一向に動く気配が無かった。


 「クーラー、欲しいよ~」


 まるで、だだっ子の様に手足をバタつかせる、元魔王の姿がそこにあった。


 「では、今から、買いに行きましょうか」


 リゼルは事も無げに答える。


 「リゼルよ。あまり、其奴を甘やかすな。夏とは本来、暑いものだ」


 先程まで、畳みの上で丸くなって寝ていたポメラニアンがうすく目を開け、眠りを邪魔された事が大層不機嫌なようで、目の前のだだっ子に対しては呆れ顔である。


 「まるで、手のかかる子供じゃな。お主、此方の世界に来て、更に堕落したようじゃな」


 バタついていた手足がピタリと止まった。

 投げ出した体はそのままに、顔だけラブの方に向ける海斗。


 「うるせ~、毛玉。お前は所詮、バタ○犬」


 これには、ラブもぶちきれる。

 大好きな愛が馬鹿にされたのだ。

 勿論、海斗も愛に対して悪口を言ったつもりはなかったが、愛の事になると見境いを無くすラブにはそんな言い訳は通じない。

 ラブはクワッと目を見開くと、躊躇なく海斗に飛び掛かっていった。

 海斗もラブも、何処でその様な下品な言葉を覚えたのかは不明であるが、今日の喧嘩は日本へ来てから一番激しい喧嘩となった。


 ズッズッズ~。

 部屋の中には素麺を啜る音が聞こえる。

 テーブルを挟み、向かい合って素麺を食べる海斗とリゼル。

 リゼルの脇では、皿に置かれた魚肉ソーセージを頬張るラブがいた。

 一人と一匹は睨み合いながら食べている。

 負けられない戦いがそこにはある。

 まだ、戦いが終わった訳では無いと、一人は顔についたアディ○スマークを撫でながら睨み、一匹は畳みに爪を引っ掻けパリパリと音をたて威嚇していた。

 間も無く第二ラウンド開始かと思われたその矢先、部屋の中にインターフォンの音が響く。

 一人と一匹は『チッ』と、舌を鳴らし、どちらともなく距離をとった。

 一時休戦のつもりだろうか。

 再度インターフォンが鳴る

 本来であれば、部屋の主である海斗が対応すべき事ではあるが、その部屋の主が動かない為、リゼルが代わって扉を開ける。

 だが、『バタン』と大きな音をたて勢い良く扉を閉めるリゼル。

 其だけで終わらず、鍵にチェーンも掛ける徹底ぶり。

 海斗とラブは『?』マークを頭に浮かべていた。


 「おい、リゼル。誰が来たんだ?」


 自分の部屋に来た客であるからして、自分に用があって来たのだろう。

 気になったのでリゼルに問い掛けてみるが、


 「魔王様がお気になさる様な者ではありませんよ。ただの害虫ですから……」


 感情を消し、冷たい眼差しを扉に向け答えるリゼル。


 「害虫って……」


 リゼルがこんなにも嫌がる相手は誰の事かと考えていると、


 「誰が害虫よぉぉぉ。さっさと、開けなさい」


 扉を力強く叩く音と女の声が辺りに響く。


 「この声、絵理ではないか?」


 ラブの口から漏れでた名前に、リゼルはあからさまに嫌そうな表情になり、次の瞬間にはラブを睨みつけていた。

 まるで、『この駄犬が』と、言う様な声が聴こえてきそうなくらいの冷めた瞳で……。


 「なんだ、絵理か。リゼル、開けてやれよ」


 海斗は納得した表情で、無情にもリゼルにそう告げる。

 リゼルは一瞬悲しそうな表情を見せるが、それが敬愛する魔王である海斗の命令となれば従わざるを得ない。

 リゼルはそっと扉を開けると、絵理の事をまるで路傍の石であるかの様に見下ろしていた。

 リゼルは背が高く、絵理の身長からすると見上げる様な容となる。

 リゼルの視線に晒され、絵理はプルプルと震えていた。


 「………………」


 「………………」


 数秒の沈黙の後、絵理が漸く口を開いた。


 「あんた、いい度胸してるじゃない」


 絵理は恐怖で震えていたのではなく、込み上げてくる怒りから震えていたようだった。

 絶対零度の眼差しと地獄の業火の眼差しが玄関先で交錯している。

 どうやら、こちらでも、負けられない戦いが始まりそうであった。



 ギスギスとした空気が漂う海斗の部屋。

 先程から誰も何も話さない。

 会話が全く無いのだ。

 理由は簡単。

 リゼルと絵理の互いによる牽制のせいである。

 絵理が海斗と会話をしていれば、横合いからリゼルが入ってきて話しの腰を折ったり、リゼルが海斗と会話をしていれば、絵理が海斗と腕を組んだりして、お互いを牽制していたのだ。

 此れには、先程まで喧嘩していた海斗とラブも馬鹿らしくなり、ラブは部屋の隅で丸くなり、海斗のみが二人に振り回される容となった。


 (誰でもいいから、この、暑いのか寒いのか判らない空気をどうにかしてくれ。馬鹿な喧嘩してごめんなさい。もう、しないから許して……)


 海斗はラブとの喧嘩を真摯に反省し、心の底から神に祈る魔王がそこにいた……。


 祈り続けて十数分。

 再度、部屋の中にインターフォンの音がこだまする。

 先程はリゼルに任せたが、今度は自分で行くからと、さっさとその場を逃げ出す元魔王。

 玄関の扉を開けるとそこには、道雄と時影が立っていた。


 「こ、こんにちは。カイゼ……じゃ、なかった。海斗さん」


 「こんにちは……」


 道雄が扉の前に、時影は道雄の後ろに体半分隠す容で挨拶してきた。

 二人が天神荘に来てから二ヶ月近く経つ。

 二人は近所でも評判で、道雄は整った顔立ちとスタイルの良さから女子高生を中心に人気があり、時影は少女の様な顔と儚げな雰囲気が母性本能をくすぐり、年上からの圧倒的な人気があった……というか、商店街の人達からはマスコット的な人気であった。

 今で言う、ゆるキャラ的な……。


 「どうした、二人して。用があるなら、あがれよ」


 寧ろ、上がって下さいと、祈る海斗。


 「あ、はい。有り難う御座います」


 道雄は何気無く部屋へと上がったが、時影は何かを恐れてか、ビクビクと警戒しながら部屋へと上がる。

 しかし、部屋の隅で丸まっているラブを見付けると途端に笑顔になり、ラブの横に座ると、そっと、背中を撫でる。

 ラブは薄目を開け時影の姿を確認すると、興味なさそうに、また目を閉じて眠りにつく。

 それでも時影は嬉しそうだ。

 余程、ラブが好きなのだろう。


 その様子に毒気を抜かれたのか、絵理もリゼルも雰囲気を和らげる。

 海斗は二人の勇者に心の底から喝采を送る。


 (勇者よ、有り難う。この場を救ってくれて有り難う)


 自分が魔族である事すら忘れ、勇者を褒め称える魔王。

 日本へと来た当初と比べ、少しづつではあるが、海斗の心境にも変化が現れてきていた。

 

これからも、宜しくお願い致します。

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