天神ファミリー?
またまた、短め。
天神荘。
元怪盗カメレオンの二人が天神荘に来てから数日。
来た当初は相当にゴタついた。
何せ、未成年で、然も出身も分からない、保護者もいない、学校に通っていた形跡も無いで周囲の人を驚かせた。
それを連れて来たのが赤髪外人風の海斗である。
余計に怪しく写った事だろう。
流石に大家さんからも駄目出しがくるかなと思っていたが、
「仕方ないねぇ、こっちにおいで」
の一言で片付けられた。
相も変わらずの懐の深さである。
未成年を二人だけでアパートに住まわせる訳にはいかないようで、大家さんが保護者代理となり、今は大家さんの家でお世話になっていた。
先程も言った通り、初めこそ奇異の目で見られていた二人も、其処は変人が集まる天神荘、今ではクロードは弟分として可愛がられ、トトに至っては、その中性的な顔立ちからマスコットの様に扱われて可愛がられていた。
皆、馴染むの速いよね。
『可愛いいんだから、いいんじゃね』的なのりである。
大家さんの家がバタバタと騒がしい。
「道雄、それをあっちの部屋に運んでおくれ。時影は、これを持ってっておくれ」
今日は二人の引っ越しの日。
とは言っても、まともな持ち物の無い二人に、大家さんが近所の知り合いから使わなくなった家具などを貰い集め、アパートの住人を巻き込んでの引っ越し騒動となっていた。
普段から引っ越しの仕事をしている俺なんかは、問答無用で強制参加である。
自分の蒔いた種は自分で刈り取れと。
そう言えば、彼ら二人、この天神荘に来た時には、まだ名前が無かった。
勿論、元のクロードとトトと言う名前はあったが、異世界転移の影響か、二人共黒髪に黒目で、何処から見ても純日本人に見えた。
そのままの名前だと違和感が半端ないという事で、急遽日本名を考える事に。
それが、道雄と時影である。
道雄とはクロードのロードからきており、時影に至っては武将みたいで格好いいからと、どうでもいい理由から付けられた名前であった。
時影の名前をトトに付ける際、大家さんの口から『ギャップ萌え』と言う声が聴こえてきた様な気がするが、きっと気のせいであろう。
二人は大家さんの遠縁の子として、クロードではなく、道雄が兄、時影が弟の兄弟とした。
そっちの方が、説明が楽でいいからと。
あれよあれよという内に、引っ越しも一段落。
大家さんの家の一角に、二人の部屋が出来上がっていた。
二人で一部屋であるが、元々持ち物の少ない二人には広く感じられた。
況しては、カビや埃の無いまともな部屋である。
今までの寝床から考えれば、まるで天国。
雨漏りや虫を気にしなくていいのだから。
文明の利器エアコンも完備。
時影は目を輝かせて部屋を見詰めていた。
引っ越しも終われば、次は歓迎会である。
歓迎会は虎二が幹事となり、引っ越しの裏側で着々と進められていたらしい。
虎二とあけみにまさかの太一も加わっていた。
だったら、引っ越しを手伝えよと言っても詮無い事。
三人が三人共、気分屋で面白好きなのだから。
歓迎会は大家さんの家の畳敷の広間で行われていた。
参加者は、歓迎される側の当人二人に大家さん。
幹事役の虎二さんに俺を含めた天神荘の住人達。
何処から騒ぎを聞きつけたのか、宵闇の社長、御子柴玄人もいた。
虎二さんが声をかけたのだろうか、相も変わらず神出鬼没な人である。
このメンバーで歓迎会が行われていた。
最初こそ、歓迎者の両人にジュースを注いだり、お菓子を勧めたりと気を使っているようだったが、今では皆、自分の遣りたい事をやり、食いたい物を食うのどんちゃん騒ぎ。
こいつら絶対、ただ騒ぎたかっただけだろう。
「時ちゃん、かわいい❤」
「ぶっ、ゴホッ、ゴホッ」
俺の隣では、胸の谷間部分を大胆にカットした服を着たあけみさんが膝立ちになり、座る時影を後ろから抱き寄せていた。
身長が低く線の細い時影。
抱き寄せられた勢いで時影の頭が丁度あけみさんの胸に収まる。
あけみさんは肩が凝るのか時影の頭に胸を乗せ、『らくちん、らくちん』と呟いている。
その場面を目にし、つい口含んだビールを吹き出してしまったのだ。
時影は真っ赤な顔をし俯き、道雄は言葉が出ないのか口をパクパクさせ、顔を赤く染めた姿はまるで金魚のよう。
大家さんはやれやれという表情で、周りの大人も面白い物を見たと騒ぐだけで、誰一人助け船を出す人はいなかった。
一人、太一だけはあけみさんの胸を凝視、缶ビール片手に瞬きもせず、胸をオカズにビールを煽っていた。
まさに、駄目な大人の吹き溜まりであった。
歓迎会が終了したのは夜も九時過ぎ。
開始したのが夕方四時頃だから、五時間程騒いでいた事になる。
知らない大人達に囲まれて緊張していたのか、時影はこくりこくりと立ちながら船を漕いでいる。
道雄が横に付き添い、時影を支えながら帰って行く大人達を見送っていた。
お祭り好きの騒がしい連中だが、仲間思いの良い人達。
あの二人にも、少なからず伝わっただろうか。
さて、俺も部屋へ帰ろうかな。
二人に背を向け歩きだすと、
「あの、カイゼ、海斗さん。有り難う御座います。助かりました」
背中越しに感謝を述べられた。
振り替えると道雄が頭を下げていた。
「気にしなくていい。俺もここの人達に助けられたくちだからな。お前達と大して変わらないし。ここの連中は騒がしいのが多いけど、気の良い人達ばかりだから、何かあったら相談するといい。勿論、俺でも構わないが」
「はい、これから宜しくお願いします。海斗さん」
海斗への挨拶を済ませると、家の中から二人の事を呼ぶ大家さんの声が聞こえてきた。
二人が家の中へ入って行くのを見送ると、海斗も隣のアパートへと歩きだす。
しかし、妙な巡り合わせだな。
異世界に於いて、人間の敵対者である魔王の俺と、女神の神託により勇者となったクロードが、地球の人間、況してや一般人に助けられ生きてるなんて…………この結果を、女神は予想していたのだろうか?
「まぁ、無理だろうな。だったら、俺等だけを転移させる筈だし」
部屋へと帰る道すがらそんな事を考え、クロードに魔王討伐を命じた女神に対し、海斗は『ざまあみろ』と心の中で舌を出していた。
次回は、6/13(月)0時に




