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馬鹿が日本に来るってよ

早足で駆け抜けますので、お見苦しい箇所が多々あると思います。

 

 時は少し遡り、魔王カイゼルが地球に転移する数時間前。


 ここはレナード大陸。


 この世界の人間の8割がこの大陸で生活している。


 この世界で人間が一ヶ所に集まり暮らすのは生きる為であった。

 現代日本とは違い、あまりにも命の危険が多い。


 この世界には、魔物、魔人、魔王と呼ばれる強大な力をもつもの逹が存在する。さらに恐怖たらしめる存在としてドラゴンや龍神といった存在も確認されている。


 そのような世界で生きるには人間はあまりにも弱すぎた。

 

 魔物とは本能のままに生きるものが多い。

 野生動物とあまり変わらない。

 野性動物が魔力をもつことで魔物に変化するものも多い。

 勿論、生まれながらの魔物もいる。


 魔人とは己の力を誇示するものが多い。

 他者と深く関わろうとしないもの達がほとんどである。 

 少数ではあるが国を興した魔人もいる。

 魔王と称されるカイゼルもその一人である。


 したがって、力弱き人間逹は身を寄せ会うようにくらしてきた。

 どんな世界だろうと人が集まれば社会や文化がうまれる。

 それが時に大きな力となる。

 その為いつしか国は大きくなり、この世界で最も文明が栄えている場所が人間大陸といわれるようになった。

 そんな人間大陸にあって最も栄えている国それがベスターランドである。

 初代ハーベスト・ベスターが興した国と言われている。

 人間大陸に語り継がれる英雄王である。


 ここはベスターランド城の地下。

 空気が淀んでいる訳でもないのに何故か息苦しさを感じる。

 どれほど降りたろうか、ようやく長い階段の終着を示す扉が目の前に現れたら。

 重厚な鉄の扉を開けるとそこには、巨大で異様な空間が広がっていた。 

 どうやらこの部屋の存在事態が息苦しさの原因であるようだ。

 

 部屋中を見回して見ると何やら怪しい文字なのか、記号なのか解らない模様が書きなぐられ、その中心の床には3メートルになろうかという円形の魔法陣が描かれていた。


 魔法陣の周りには頭から膝下まですっぽり隠れる真っ黒な外套を着た怪しきもの逹が神妙な面持ちで集まっている。

 怪しきもの達は胸の前で手を組み、祝詞のようなものを唱え始める。


 そのなかの一人の男がゆっくりと目を開き、よく通る声で皆に話しかけた。


「さあ皆さん、とうとうこの日がやってまいりました。我ら黒の法師が20年の時をかけ完成させた、降天魔法陣。この地に神を降ろし魔人共を根絶やしにするのです。さすれば我らは人類の救世主として迎えられるでしょう」

 

 その言葉を聞いた皆が頷く。


 「我らの希望よ、ここにその力を示さん」


 その言葉が鍵となったのか、魔法陣から巨大な魔力が溢れだし、眩く輝きだした。


 「あぁぁぁ、とうとうご降臨される。我らの神よ」


 ある者は両膝を地につけ天を仰ぎ、ある者はただただ胸の前で手を組み涙を流している。


 光が更に強くなり目を開けていられなくなったその時大きな地震がベスターランドを襲った。

 この世界では地震は稀である。

 突然の大地の揺れに何人かの法師が足を捕られ跪いている。

 法師のリーダーであろう男も周りの人達を落ち着かせようとするが、あまりの揺れに動けずその場で声を張り上げることしか出来なかった。

 揺れはいまだ収まらず皆呆然としていると魔方陣より不吉な音が聞こえてきた。


 ベキベキベキという音と共に魔法陣にヒビが入っていく。

 ヒビは少しずつ広がっていく。

 大地から溢れだす魔力も益々増大していく。

 だが受け皿となる魔法陣が耐えられずとうとう砕けてしまった。


 その結果、今まで集められた魔力は魔法陣がなくなると同時に目映い光りを放ちながら世界に四散していく。






 ここは魔大陸にあるアスベストと呼ばれる都市。


 魔王カイゼルが治める地である。


 魔大陸にある都市としては比較的安全といわれている。


 その都市を造りあげたのが魔王カイゼル………ではなく

その配下の魔人リゼルである。


 リゼルはカイゼルの腹心としていつも側にあり、ただ魔法をぶっぱなすだけの主に対して時には宰相、時には執事として尽くしている。


 リゼルの尽くし方は慈愛に満ちた母親が我が子を包容するが如くその愛情?は魔王カイゼルのプライベートにまで及んでいた。


 国政から家事までこなす万能ぶりである。


 その為、魔王カイゼルはとてつもなく暇だった。


 今日もカイゼルはその威厳を示す為に玉座に座り、ただただ謁見者の世辞を聞くというツマラナイ仕事をこなしていた。

 リゼルにそれだけはと何度も説得され、この仕事だけは毎日欠かさず従事していた。

 リゼルが国政等をすべて対応する為に、カイゼルは他にやる事が無いのである。


 「今日のお仕事終了~」と、

陽気な声を出しながら謁見の間を出て行くカイゼル。


 部屋に戻り喉が渇いたので召し使いを呼ぼうとベルに手を掛けようとしたその時コンコンとノックの音が聞こえてきた。

 カイゼルが返事するとワインとグラスを一対に銀のトレーに乗せ、器用に左手一本でトレーを持ち優雅な足捌きで部屋に入って来る執事服のリゼルがいた。


 (あいついつの間に着替えたんだ?戻ってくる時仕事部屋覗いたけどまだ仕事してたよな)


 不思議に思い首を傾げるカイゼル。


 その仕草が気に入ったのかリゼルは口角を僅かに上げ、美しい姿勢でワインをグラスに注いでいく。

 

 リゼルは所々みせるカイゼルの子供っぽい仕草をとても気に入っていた。


 リゼルは銀のトレーにグラスを乗せカイゼルの前に差し出す。

 

 グラスを持つとカイゼルは一気ににワインを飲み干した。


 カイゼルは空になったグラスをリゼルに返そうと前につきだす。

 リゼルがグラスを受け取ろうと腕をグラスに伸ばすと、目の前にいるカイゼルが一瞬怪訝な顔をした。

 リゼルは何か主に不信を与える態度でもあったのではと考えるも思い付くものが見当たらず直に問いかけることとした。

 

 「どうされましたか?カイゼル様」

 

 「あ~、いや、何でも無い」

 

 特に気にするでもないカイゼルの返答が返ってきた。

 カイゼルは小さい頃から圧倒的な力を持っていた。

 すべて力任せに解決してきた。

 それで詰まることもなかったからか、細かい事に拘らない性格でもあった。


 そのカイゼルがあの様な顔をするのは稀な事である。


 もう一杯ワインを貰おうとリゼルに声を掛けようとしたそのとき、突然カイゼルの足下の床から膨大な魔力が溢れだした。


 魔力はカイゼルをその中に囲うように溢れている。

 魔力は更に強くなり今は部屋中を飲み込んでいる。


 「カイゼル様。ご無事ですか」


 「お~リゼル。この溢れだす魔力を見ろ。まるで神が俺を祝福している様ではないか」


 「何を暢気な事を。さすがにこれはただ事ではありませんね。カイゼル様、今のうちに部屋の外に避難致しましょう」

 いくら魔人であるリゼルであったも、この魔力量には対抗も制御も難しそうで即、退避の判断を下した。


 だが、リゼルがカイゼルの様子を窺うと、


 「はぁぁぁぁ」


 凄い勢いで溢れだす魔力を吸収しているカイゼルがいた。


 「カイゼル様お辞め下さい。いくらカイゼル様でも無茶すぎます」


 溢れだす魔力の量は魔王一人で対応するにはあまりにも膨大すぎた。


 リゼルは無理にでもカイゼルを部屋の外に出そうと必死に体を押すが、ビクともしない。

 カイゼルの肉体的なリゼルとの力の差がそれを許さなかった。


 カイゼルはリゼルの目を真っ直ぐに見つめ、自信に満ち溢れた顔で宣言した。

 「な~リゼル。諦めたらそこで終わりだぜ。俺ら魔人は力を求める種族だろ。俺に任せろ」


 カイゼルは右腕を天高く突きだし


「この魔力を全て吸収し、俺は、俺は、神になる。俺様最強伝説の始まりじゃ~!」


 その言葉を最後に魔王カイゼルとその腹心リゼルは膨大な魔力の光の中に飲み込まれていった。


 

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