プロローグ
初めての投稿作品となります。宜しくお願いします。
何故、何故だ。なぜこうなった。
ここは、白い石壁で造られた建物。
とてもこじんまりとした部屋の中。
部屋の入口近くの立て札にはいろんな人物画(顔)が貼られ、辺りの建造物とは何か違う雰囲気を醸し出している。
辺りを歩いている人間達はたいして興味も無さそうに、だがチラチラと部屋のなかにいる俺を覗き見してくる。
とても不愉快である。
だいだい入口の天井についている大きな赤い玉はなんだ。
もしや、この建物に入る者を探知する魔道具ではないのか。
部屋の中をキョロキョロと見回していると、目の前の男が声をかけてくる。
「あのね君、話聞いてる?」
目の前には上下青い服を着、平たい帽子を被る生真面目そうな男がまっすぐ俺の目を見て問いかけてくる。
広場で声をかけてきた時も、まるで怪しい者を目にしたような顔で此方を見てきた。
一緒に来いと言われたときは断って調査を続けようとも思ったが、周りの目線が気になり注目を浴びるのも避けたかったので、一緒についてくことにした。
男は訝しむ目で俺を見ている。
「君、そんな格好して公園で何してたの?怪しい人がいるって苦情がきてるんだよ。何やらぶつぶつ言いながら公園を荒らしてたそうじゃないか」
何と応えたらいいのか考え込んでしまい、返答に詰まってしまう。
何か伝えようにも、俺が経験したことを正直に話した所できっと信じはしないだろう。
生真面目そうな男は、全く目を逸らさず俺が話だすのを待ってくれているようだ。
話すのか。事実をありのまま?
きっと、信じはしないだろう。
どうやらここはガルドラ大陸でもなく、それどころか、俺がいた世界とも違う異質な世界に来てしまったみたいだ。
自分の体内に蓄積された魔力も、大地や大気中に漂う魔素もほとんど感じない。
ここは全く違う異世界のようだ。
それを踏まえたうえで真実を話すとなると…
俺の勘が、とてつもなくヤバい事になると告げている。
さて、ここをどう切り抜けるか。
俺はガルドラ大陸と呼ばれる地、人間共には魔大陸と恐れられる大地に覇をとなえる偉大なる魔王カイゼルである。
我が魔王の智慧をもちてこの窮地を華麗に脱して見せようではないか。
くっ、くっ、くっ。驚嘆せよ異世界の人間共よ。
これこそ、魔王の力だ。
ガタガタッ。
青服の男は突然椅子を弾き倒しながら立ち上がった俺を、怪訝な顔をしながら中腰になり、腰にぶら下げている棒を軽く握りいつでも動ける構えをとりながらこちらを警戒している。
その棒にどんな力が付与されているか知らんが抗えるものならやってみよ。
俺は両腕を天高く突きだし唱え始める。
そう、魔法を。
「さあ知るがよい。我の偉大さを」