高貴なる日常
ここは俺…いや、私が生まれ育った場所だ。何とも居心地の悪く窮屈な場所で有ることは間違いない。
朝目が覚めれば身だしなみと着替えを侍女と共に行う。その後はお勉強の毎日だ。私はそんな詰まらない日常の中に1つの楽しみが有った。
武術の時間、その中でも剣術と槍術は私の楽しみだった。何故なら私には夢があった。それは、王族が見るべきでは無い夢ではあったが…
「行くぞダーヴィス!!」
「さあ、掛かってきなさい!」
幼い声と年期の入った野太い声が鉄と鉄の交わる音と共に聞こえてくる。
幼い少年は未熟ながら筋のいい動きをしていた。
「ラルク様、我がアンバーランド王国の近隣国の中で最も力を持った国の名前は何でしょう。」
「リトランダ連合王国」
「ではその関係は…」
「広く海に面したアンバーランド王国に対して、内陸に多くの領土を持ったリトランダ連合王国はその海産資源を求めて数十年前に戦争を起こしている。」
「はい、良くできました。但し補足するとすれば未だに数年おきに小競り合いを仕掛けて来ている、と言うところですかね。」
知ってる…知ってる知ってる知ってる!!
何だよ!反復学習か知らないけど、もう分かったからいいだろ!!
そんなぐちぐちと細かいから、その歳に成っても独り身何だよ…っと言い過ぎた。
まあ、言ってないけど。
退屈な勉強の毎日。そして、俺の嫌いな社交界…なんで俺が王族なんだ。もっとこう言うのが大好きな奴にやらせてもいいんじゃないかと思う。
「はい、次に勇者に纏わる話ですね~」
「それ!!その話もっと聞かせて!!」
突然身を乗り出して食い付いて来たのは成る程。勇者や英雄に憧れているラルク様は分かりやすい。
「先代勇者はネグロポリス神聖興国のご出身だったとか…」
「ネグロポリスって確か神様が興した国だって本当!!?」
「ええ、あそこは神様由来の土地でしたからね。現代の世界四大勢力に割り込む事が出来たのもそれが原因かと。」
ああ、なんと綺麗な眼をして話を聞いて下さるのでしょうか。しかし、私は心を鬼にします。全てはあなた様の将来の為なのです…
「ではその四大勢力とは何でしょう」
「な…ここで問題を割り込ませて来るのか、、このネグロ教師め」
「そんな言葉は有りません」
「………アンバーランド王国、ネグロポリス神聖興国、そして東方の慎帝国に西方の島国アインサウス連合王国、、正解?」
「はい、正解でございます。」
ネグロポリス神聖興国 祭壇の間
ゴブレットに灯る炎の明かりのみで照らされた聖職者達がざわついていた。
「パーン枢機卿!大変です!!」
慌てた兵士が鎧の金属音を鳴らして祭壇の間に更なる騒音を与える。
「て、天命が下りました!!」