少年の真実
私はあれから少年の行方を追った。冒険者ギルド職員の職権をフルに活用して、少年の情報を探して行くにつれて分かってきたことはまず、恐らくあのサイレントウルフを狩ったのはやはりあの少年であったこと。
そして、少年は宿住みであったこと。これは冒険者ならさして珍しい事では無い。
重要なのはここから、少年の名前である『ライト』これが本当に少年を指す名前だったのか分からなくなってきている事。
「やはり、方々の証言から言って10代前半の少年が夜中に冒険者ギルドの前で何かしていた事はほぼ間違え無いかと思われます。」
「んん?んんんんんん~??」
「そ、そんな顔されても困ります。私どもとしても周辺の住民からの証言を纏めているだけですので。」
「ふぅ~ん、まあ信じて上げようかな!」
兵士の皆様にこんな態度がとれるのは少々秘密だけど、間違え無さそうだ。
次は情報屋に調べさせて置いた事かな。
「埃くさ~」
「人の家に来て開口一番がそれかね!?」
古びた館で出迎えてくれたのは情報屋兼占い師のヒルベ婆さんだ。こう見えて実は私が来たことを大変喜んでいる…よね?
「誰が喜んどるかね!なんてもの調べ指すかね、この娘はまったく~」
「あ、あれ?何か有ったの??」
「お前がワシに調べさせた相手…相当なヤツじゃよ」
ヒルベ婆さんの話に寄れば、住んでいた宿は見つかった。けど少年は宿を転々としていたことが分かった。
さらに、あの少年の呼称は行く先々でまちまちで何れが本当なのか分からない程であった。
つまり『ライト』も偽名であったと考えるのが普通だと思う。
「でも恋する乙女はそんな彼を探して仕舞うのよ~!!!!」
「バカなの?…ミーア」
「な、なななな何ですと!!?」
誰も居ないと思って広野で愛を叫んでいたら友人、ステアに声を掛けられてしまった。
「…で、バカなの?」
「ひっど!ステア酷!!」
「だって、何処から突っ込めばいいの?これ」
現在、美人二人で優雅にお茶を楽しんでおります。はい。
15才にして冒険者ギルドの受付をこなす天才美少女ミーアちゃんは2つほど年下の男の子に恋い焦がれてしまっていて、その相談に乗ってくれているのがアラウンドサーティーなるアラサーのステアである。
なお何故私がこんなに目上の方々にこんな口を聞けるのかは、またまだ謎なのです。
「終わった?」
「はへ?な、何が!?」
「あんたの心の中は透け透けなのよ」
「やだ!ステアのえっちぃ~」
「あ~、はいはい。で、有力な情報ってのはそれだけ?」
「ん~ん、実はね…」
ヒルベ婆さんの話の続きで、全く関係の無さそうな話が突然出て来て。
その話が『第三王子ラルク・イフリート・アーサー王子』が行方不明になっていた。
「っていう話なの」
「え~と、もしかしてだけど…」
「そう、ラルク王子の行方不明期間と少年の活動期間がほぼ一致するの!!」
兵士達がお互いを鍛え合い暑苦しい程の熱気が立ち込める中、練兵場の一角にその者達は向かい合っていた。
「貴方は自分が王族である自覚は有るのですか!!」
「無い!!」
熟練の騎士ダーヴィスはたった13歳の少年に手こずらされて居た。
「どうして貴方はそう無責任なのですか!!」
熟練の騎士による剣劇は目にも止まらぬ速さで幾つもの剣線を描いている。かつて戦場で見せたあの時の様にその剣は。
「ガギィィン」
先程まで避けるに徹していた少年は反撃に出る。
「憧れてしまったからだ!!夢を持ってしまったからだぁぁぁ!!」
周囲で自らを研いていた兵達も既に二人の剣劇に見入ってしまっている。ただ、それは元近衛団長と第三王子の繰り広げるモノとは思えなかった。