蜘蛛
ふとしたことから気付けた
悲しみの交差に苦笑いすれば
蜘蛛は食べてしまった
伸ばした糸は宙に垂れる
夜露が掬った光る糸
そのまま眠りの谷へ
深くおちてゆきたい
あなたのところまでゆきたいと
あなたの悪夢を私は食べたいと
きっと自分を戒めて甘えるのだ
なぜ、なぜ言葉は
私の言葉はこんなにも非力で
いつも空へ向かうことなく
漂うばかりで
垂れるばかりで
それを私は掴むと
ボロボロと崩れ
虚無感が日ごと重なり
蜘蛛は糸を作ることを
やめようとしないのは
カタチを作らなければいけないと
囚われているからなのだろうか
断たれる私を
嫌われる私を
ずっと許せない
私の言葉は心無い
迂愚な言葉は垂れてゆくばかり
いつまで囚われているのかと
情けなさは 優しさを砕き
それさえも捉えられない愚鈍
戯言を食べた蜘蛛は
か細い糸を宙に投げ
朝露は糸を逸れて葉の上に乗り
空を映していた