Hello my romance
やっと終わります。今回はしょっちゅう視点が変わります。読みにくかったらごめんなさい。
二人が大喧嘩してから1週間が過ぎた。二人とも反省しているようだがなかなか謝りに行けない。悶々とした気持ちが立ち込める。
ただただ、何もせず、時間だけが過ぎていった。
~~~
謝りたい、本当に謝りたい。ただ一言「ごめん。」と言えば済む話なのに。言いに行く勇気が湧いてこない。あんなに彼女を傷つけてしまったのにいまさら謝っても許して貰えるかどうか。怖くて会いに行けない。
・・・こんな不甲斐ない自分が嫌いだ。
~~~
“このままじゃダメだ”。
心では分かっているはずなのに体が動かない。だってどんな顔をして彼に会えって言うのよ!今まで喧嘩もロクにしたことがない、周りからはおしどりカップルと呼ばれていた私たちだから仲直りの方法がよく分からない。謝ったところで関係が元に戻るとは限らない。もしかしたら余計に悪化してしまうかもしれない。嫌だ、それだけは。でも、それって私の我が儘だということは理解している。
・・・難しい、こういう時はどうすればいいのだろう。
まだまだ二人は出口の見えないトンネルの中にいた。
「何かきっかけが欲しい。」二人は同じことを思っていた。でも願っているだけではダメである。自分から動かなければ解決はしない。
二人は覚悟を決めたようだ。お互いがお互いにメールを送る。
「大事なお話があります。」
いよいよ運命の1日を迎えようとした―――。
~~~
うわ・・・緊張する。彼女になんと言って謝ろう?メールでは覚悟を決めたつもりだったが現にここに立つと頭が真っ白になる。口の中が乾く。ああ、早く来て欲しい。待っている時の時間は嫌にゆっくり流れるものだ。
「遅れてごめんなさい。」
しばらく待っていると控えめな声が聞こえてきた。彼女の声に間違えはないのだが、普段は使わない敬語を使っている。・・・雰囲気がつかめない。
「ぜ、全然、こっちも待っていないよ。」
何か返さなきゃと焦っていたせいで舌を噛んだ。痛い。ハンパないこの痛み。思わず涙が出そうだ。そんな俺を見かねたのか、彼女はバッグからハンカチを取り出した。
「使う?」
白くて綺麗なハンカチだ。細かいところまでの刺繍が美しい。
「ありがとう、ございます。」
ギクシャクした関係だからかこっちまで遠慮がちになる。ハンカチを顔に当てるとふわっとローズの芳しい香りが漂ってくる。・・・ああ、いい匂い。(変な意味はない。表現の仕方が悪かった。)安心するんだ、この匂いを嗅ぐと。さっきは痛さからの涙だったが今は嬉し涙だ。どうやら俺は涙もろくなってしまったようだ。
「大丈夫?何で泣いているの。」
彼女は子供をあやすような口調で聞いてきた。だから自分は大人なんだと証明するかのように、自信満々で言った。
「大丈夫、大丈夫。ただ君に会えたから。」
~~~
「大丈夫、大丈夫。ただ君に会えたから。」
彼が笑顔で言った。ずるい。そんな言葉でまた私の心を掻き乱そうとする。自信満々のようだからお世辞ではなさそうだ。
「何よ今更。・・・ずるいわよ。」
嬉しくて、混乱して、怒りが消えなくて。ついつい可愛くない言葉を口にしてしまう。こんなことしたら余計に彼が嫌な思いをするというのに。ほら、彼が困った顔をしている。
「だよね・・・ごめん。」
「こっちこそ、言い方が悪かったね。ごめん。」
気まずい沈黙の時間が流れる。もう、我慢の限界だ。こんなの嫌だ。
「ごめんなさい!」
「ごめんなさい!」
謝るタイミングは本当に同時だった。それに驚いた私たちはたまらず吹き出してしまった。笑いが収まらず5分近くは顔がゆるみっぱなしだっただろう。お互いの崩れた顔が見ていて面白かったというのもあったが、喧嘩中だったのに息ぴったりだったことがツボにはまったらしい。周りの目を気にせず笑い続けた。(もちろん、迷惑がかからない声量にしたが。)
~~~
「・・・俺、悲しかったんだよ。萃香がホスピスってところにいるから。しかも、終末期ケアを行うところにいることを俺にさえも黙っているからさ。」
俺はここで言葉を区切る。ここから先言葉を紡ぐのが怖い。言ったことが本当のことになってしまうのではないかと。でも、言わなければならない。
「俺の、手の届かない所に行ってしまうんじゃないかって不安で不安で・・・。」
俺は真剣に言った、つもりだ。けど、彼女の顔は何か、笑いを堪えているように見える。だから俺はとりあえず疑問に思ったことを聞いてみる。
「俺・・・変なことを言った?」
「言った。」
彼女は即答だった。
やってしまった~。後悔という言葉が頭の中でチカチカ点滅する。
「根本的に話が違うよ。いつ私がそこを利用しているって言った?」
・・・え?間抜けな声が出る。若干混乱して状態のまま頭の整理をしようとする。た、確かに。あそこにいるだけで彼女自身がケアしてもらっているとは言ってない。
全て俺の勘違いってことか・・・。そう思ったら急に力が抜け始めそのままヘナヘナと座り込む。頭上から彼女の声が聞こえる。
「ごめんね、心配をかけて。それに気がつかずにひどいこと言っちゃった。」
妙に弱々しい声だった。そんな彼女に声は、掛けられなかった。彼女の話は続く。
「なんで私があそこに居たかっていうと、父に会いに行ってたの。」
ん?何か引っかかりを感じる。あっ、思い出した。
「でも、萃香の母さん、そんな素振りなんかしてなかったぞ。自分の夫が終末期だったら・・・。」
「両親ね、3年ほど前から絶縁状態なの。理由は言えないけどもう関係は冷え切っている。昔のような関係に戻るとは思えない。でも、戻って欲しいの。だから、頼んでみたの。終末期とはいえ今状態が安定しているから、話し合ってみてくれないかって。」
そこで彼女の顔が曇る。表情により結果が伺える。
「ダメだった・・・でもね!」
先ほどまで曇天のような顔だったのに急に晴天のようなキラキラ眩しい笑顔になった。
「お父さんとお食事にいけそうなの!」
そうはしゃぐ彼女が可愛くてどうしようもなくなってしまった。理性が吹っ飛ぶ寸前だった。
「よ、良かったね・・・。」
どうにかこうにか抑えた。なんとか祝福の言葉が言えた。盛大に声が裏返ったが。
~~~
私は無我夢中でしゃべりまくった。彼に聞いて欲しくて、もっと知って欲しくて。でも、「良かったね」の言葉が裏返ってる。なんで?まさかだけど引いてるってことはないよね?話の内容を変えたら彼の機嫌は直ってくれるだろうか。
「仲直りできてよかった。正直あの時はどうなるかと思ったもん。2度と元には戻れない。両親と同じ道を歩むんじゃないかって。・・・そう、思ったの。」
彼はハッとしたような顔になる。そして、
「でも、戻れたね。いや、もっと固い絆が生まれたね。」
手をぎゅっと握ってきてくれた。だからお返しに。
「違うでしょ、ちょっとクサいけど・・・愛だよ。」
恥ずかしいことを言ってやった。言った私も恥ずかしいけど。すると彼は、
「あ〜!もう限界だよっ。」
と言って唇を重ねてきた。
~~~
とうとう理性が吹っ飛んでしまった。でも彼女の唇、すごい柔らかい。甘い、甘い。
甘ったるいのは苦手だけどこの甘さならどれだけども戴ける。
「杏?」
萃香は不思議そうな声を出す。確かに今までこんなことしたことがなかったから。
「嫌だった?」
遅いけど一応確かめておく。
「ううん。嬉しかった、初キスだったから。」
その言葉に調子に乗った俺はもっと求めてしまう。
「もう一回していい?」
「いいよ。」
優しい彼女の言葉に甘えた俺はためらいもなくキスをした。
仲直りは出来たけど、1つ、解決できていないことがある。なんとなく聞きづらかったが、思い切って聞いてみることにした。
「ねえ、聞きたいことがあるんだけど。」
「何?」
「お前、俺の病室でコケたわけじゃないだろ。」
「!」
彼女の顔が一気に引きつる。
やっぱりか・・・。その顔は図星だと言っているようなものだ。顔色が相当悪かったが大丈夫だったのだろうか。
「そ、それは!・・・ただの寝不足です。」
彼女は顔を赤らめて言った。その言葉に安心した俺は躊躇いもなくこの言葉が言えた。
「良かった・・・。」
今度は声が裏返らなかった。
萃香と杏のリア充っぷりをお届けしました!誰得なんでしょうねw
前回二人は暴言を吐きまくったがここまで愛の言葉を言うようになって・・・。
愛ってすごい!
展開早いように感じましたがそこは見逃してください。次回から頑張りますw
ここまで見てくださりありがとうございます!