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See you my romance.  作者: ちくわ。
喧嘩、しています
2/4

すれ違い

前回の続きです。あれ、思ってた展開と違う・・・。

彼女の退学の話を聞いて10日ほど過ぎた。今日も必修科目の講議だけを受けて帰る。サークルには全く顔を出せていない。さて、今日は彼女の家に行ってみようと思う。彼女がこの10日間をどのように過ごしたのか。・・・ちゃんと元気にやっていたんだろうか。それらをすべて確かめに行くために。

そもそも何故彼女は大学を辞めなければならないのか。そこが疑問だ。彼女は教師を目指しているだけあって頭が良い。この間だって俺が入院していて受けられなかった講義の内容をわかりやすく教えてくれた。それに彼女は顔が広いし、信頼も厚い。だから人間関係でトラブってる様子も見られない。一体何が原因なんだ。俺の思考は堂々巡りする。そうこうしているうちに彼女の家に着く。インターフォンを鳴らすとすぐに彼女の母親が出てきた。

「あら、杏くん。珍しいわね、どうしたの?」

「萃香は元気にしてますか。最近大学に来ていないもので。」

俺がそう言うと彼女の母親は目を閉じて静かに言った。

「萃香、旅行してるわよ。体の疲れを癒したいからゆっくり観光でも行こうかなって。あ、杏くんも行く?あの子の居場所教えてあげるからさあ。」


ということで教えてもらった通りの場所へ向かう。そこは小さな村のようなところだった。人口は100人いるかどうか、でも海も山もあり自然豊かなところ。1つ息を吸うだけで頭からつま先まで全て新品になった感じがする。大げさではない。それだけ空気がうまいと思った。

そして、住所を頼りに彼女のもとへ。ここはどうやら施設のようだ。彼女はここで何をしているのだろうか。不思議で仕方なかった。



彼女はすぐに見つかった。施設内の図書館で天文学関連の本を読んでいた。昔から宇宙とか何とかと言っていたので彼女らしいチョイスだ。約2週間しか離れていないはずなのに、彼女を見つけた時ひどく懐かしいと思えた。一方彼女はびっくりしていた。なぜ俺がここにいるのかと。

「ここはどこなの?」

ふと、思ったことを口にする。彼女の顔はくしゃっと歪んで、

「・・・施設だよ。」

何かを誤魔化すように言った。俺はさらに追及する。

「何の為の?」

これを聞いた瞬間、彼女の琴線に触れたようで、目から水が流れ落ちた。

「・・・ホスピス。終末期ケアを行うところだよ。」

彼女の言葉を聞いた瞬間背筋が凍った。“終末期”?彼女は今、そう言ったよな?

「終末期って、なんだよ。・・・お前やっぱり俺に隠してたじゃねえか!」

彼女の言った言葉が信じられなくてつい、怒鳴ってしまった。ほかにも患者はいるというのに。こんなことを言いたいわけではないし、言っても意味はない。わかってる、わかっているはずなのに。抑えようとするのにまだ口から罵倒の言葉が出てきてしまう。

「お前はそんなに俺を信頼してなかったのか!お前にとって俺はそれくらいの人間だということなのか!?・・・答えろよ、早く!」

彼女は顔を真っ赤にして俯いてる。歯を食いしばって目に浮かんだ涙を零さないように。ぱっと顔を上げた彼女は俺の方を見た。案の定泣くのも時間の問題だ。そう思っていると、「・・・なによ、あんたこそ私のこと信じてくれないじゃない。なんで私ばかりあんな言われようされなきゃいけないのよ!信頼してないのはどっちよ!」

彼女も怒鳴ってきた。こうなるともう自分が制御できなくなる。

「もう来ないで。あなたの顔なんて見たくない。」

「こっちこそ来るもんか!これからはお前の顔を見なくて清々する!」

売り言葉に買い言葉。お互いがお互いを罵り合う。この年になってなんてことを、と後から反省することになるが今はそれどころではなかった。



ドカドカと足を動かし施設から立ち去る。あんなにうまいと思っていた空気が今では濁っているように感じる。同じものだとは到底考えられない。

しかし、なんでこうなるかな・・・。さっきの彼女との会話を思い出す。ただ隠し事はしてほしくなかっただけなのに。なんであんな言い方をしたんだろう。

「はあ・・・。」

知らず知らずのうちに溜め息が漏れた。後悔、ほんと後悔という言葉しか出てこない。

とりあえず、もうここにはいられない。早く帰ろう。



重い身体を無理矢理動かして自分の家に戻った。

家に戻っても気分は良くならない。夕食をとっても喉に通らないし、お風呂につかっても疲れは取れないし、布団に入ってもまったくもって寝付けない。心のもやが広がるばかりだ。

「あー、もう!」

大きな声を出しこの靄を吹き飛ばそうとする。効果は、ない。その日俺は一睡もできなかった。



~~~

彼がまさかここに来るとは思っていなかった。“どうしてここにいるってわかったの?”

それしか頭になかった。混乱する。あ~!なんで、なんでなんで・・・・・・・・・。


彼が怒り出した。「隠してる」?何を?

「お前はそんなに俺を信頼してなかったのか!お前にとって俺はそれくらいの人間だということなのか!?」

彼は悲しそうな表情をしているのが見えた。なのに心に刺さった言葉の刺が痛くて、八つ当たりをしてしまった。

「・・・なによ、あんたこそ私のこと信じてくれないじゃない。なんで私ばかりあんな言われようされなきゃいけないのよ!信頼してないのはどっちよ!」

こうなってしまったら後戻りはできない。

「もう来ないで。あなたの顔なんて見たくない。」

こんなことを言いたいわけじゃない。でも心にもない言葉が口から勝手に出てくる。嫌だ謝らなきゃ・・・。と、思ったら、

「こっちこそ来るもんか!これからはお前の顔を見なくて清々する!」

彼の一言により完全に心にヒビが入った。目の前が真っ暗になる。

気がついたらもう、彼の姿はなかった。



前回のあとがきに「次回は名前をつけておかないと困る」と言っていましたが、全然困りませんでしたw

さて、すれ違った二人は元に戻るのか!次回で終わらせられるようにします・・・。

ここまで読んでいただきありがとうございます!

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