第四話 目標(クエスト)を決めよう②
進むべき道筋は見えた。
しかしその道筋は、この国やこの世界、また俺達の動き方によって、容易く枝分かれする。
道筋が見えたといっても、それは方角が定まった程度で、進むべき道筋は無限にある。
今は無限にある道筋を一本に絞る…まではいかなくとも、数を減らすには、大まかに2つの方法がある。
一つ目は現状把握だ。
「牢屋にいる」程度の俺個人の情報ではなく、この国、ひいてはこの世界の現状を委細漏らさず知る必要がある。
それをする事によって、今は有効だと思っていても、実際はかなり険しい道だったということになることを防げる。
要するに「この道は進んではならない」という標識を立てるのだ。
だが牢屋に拘束されている以上、知り得る情報は少ない。
看守に聞く、ということもできなくはないが、看守の情報にも限りがあるだろう。頼れる情報原とは言い難い。
そこで俺達がするのはもう一つの方法。
「なぁ、美沙希。目標を決めようぜ」
「いきなりどうしたの兄さん。今の最優先目標はここからの脱出でしょ」
妹は俺の思考を振り出しに戻しかねない発言をした。
「ハァ…そうじゃなくて、最終目標を決めようぜって言ってんだよ」
「最終目標はここから出て兄さんと逃避行することだね」
「逃げることを目標にしてどーすんだよ。じゃなくて、…んーっと、将来の夢みたいな…」
「兄さんのお嫁さん」
「却下だ」
この可愛い妹は、ちゃんと嫁にだすか婿を入れるかしなきゃならんからな。それだけは絶対だ。
「…………」
「どうした?」
「……ぐすっ…ふぇぇぇ……」
えぇええええ!?マジ泣き!?
「ぐすっ…小さな頃からのっ…夢だったのに……」
「あー…そりゃ、悪かったな」
俺はなんとなくバツが悪くなり、謝ってしまった。
「うぅ…小学校の頃からずっと、「将来の夢は兄さんのお嫁さん」って書いて、卒業文集にも兄さんの素晴らしさを延々と書き綴ったのに…」
嘘だろ…なにこのヤンデレ妹…。家に来る美沙希の友達がみんな俺に熱っぽい視線を向けてくるのは、こいつが洗脳してるからなんじゃないだろうか
「そ、それは、なんというか…」
気持ち悪いです。 なんて言えるはずもなく、俺は押し黙った「おい、貴様っ!!何を話している!」
俺が押し黙った瞬間を狙ったかのように、看守が喚き散らした。…え?今俺黙ってたよね?しかも貴様って単体で呼んだよね?
まぁいい、話題を戻すにはぴったりのタイミングだ。
『美沙希、話を戻すぞ』
俺は床に文字を書く。手を縛られているが、体の前で縛られているので文字くらいは書けるのだ。
美沙希も俺の意図を悟ったのか、床に何かを書き始める。どれどれ…?
『の』
「いじけてんのかよ!!」
見れば、美沙希は悲しそうに目を伏せながら、しゃがみこんで延々と「の」の字を書いていた。口も小さく動いているが、何を言ってるのかは分からない。
いや、分かりたくない。
「黙れと言っているのが分からんのか貴様はっ!!」
うう…また看守さんに怒鳴られちゃったわ…。なぜ私単体を指定して怒鳴るのかしら。私も女の子ってことにすれば怒鳴られないのかしらん。
「大丈夫だよ兄さん!!」
「なにが?」
突然元気になった美沙希におどろきつつ、聞き返してみる。
「兄さんなら女装しても似合うよ!!」
ツッコミどころが多すぎてツッコめないのがツラい!!
まぁおかげで大きな声をだして怒鳴られないからよしとしよう。
…つーか、一向に話が進まねぇじゃねーか!!
茶番してたら全然話が進みませんでした(笑)
第四話はもうちょっと続きます