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第三話 夢の中
周りがすべて真っ白な世界だった。
その白いものが壁なのか、それとも永遠に続く真っ白な世界なのか、白い物が俺の体を包んでいるのか、全く分からない。
ただ一つわかる事は、これが夢だということだ。
夢であると、感覚的に理解している。ここは夢である、と意識のすべてが呼びかけているかのようだった。
明晰夢、とかいうやつだ。
夢だから、一面真っ白でも目がチカチカしたりしない。
夢だから、この不思議な世界にも驚きはしない。
だが、夢なのに俺の体は指一本動かせない。いや、動かそうとすら考えられない。
――ここはどこだ…?――
ふと、そう思った。
しかしそれも、現状の驚きからではなく、単純な好奇心だった。別に分からなくてもいいけど、知れるなら知りたいという程度である。
だから、それ以上は何も考えず、ただ呆然と眺めていた。
この、絵もかかれていない、真っ白なキャンパスのような世界を。
ここまでがプロローグです
この次かその次くらいから主人公が隠居生活を目指し始めます。