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第一話 目が醒めると…②

 俺はとりあえず、妹を起こすことにした。起きてくれなきゃ走って逃げれないからな。

 妹の寝顔を覗き込む。

 こんな状況にあっても彼女の無防備な寝顔は文句無しに可愛い。

 ここが異世界であろうと新世界であろうとマテ貝であろうとオウム貝であろうと、世界一可愛いのは妹だと宣言できる。

 嫁に出しても恥ずかしくないし、学校でもモテていたらしいし。

「見た目だけは、な…」

 こうして寝ている分にはかなり可愛い。俺も見ている内にだんだんここが異世界であるということを忘れてしまいそうだ。

 俺はそっと手を妹の両肩にあて、一度大きく深呼吸。肩に当てた手に少しだけ力を込め、そして…

「起きろ~美沙希~」

 大きく揺さぶった。

 ちなみに美沙希ってのは妹の名前だ。

「あうあうあうあう…」

 美沙希は揺さぶられながら変な声をあげ、目をぱちくりして体を起こした。

「…あれ?兄さん…?」

「おはよう、目覚めの気分はどうだ、美沙希」

「なんで兄さんが…」

 俺の質問には答えず、いまだに両肩に乗せられた俺の手を見る。そしてキョロキョロとあたりを見渡した後、なにやら納得した顔になって目を閉じて、唇を突き出してくる。

「兄さん、いいよ?」

「は?おい、なんでまた目を閉じんだよ」

 ちょっと忘れかけてたが、今は一刻も早く逃げなければいけないのだ。

「だって兄さんが両肩に手を置いて…」

「起こすためにな」 冷静に突っ込む。

「こんな人気(ひとけ)のないとこで…」

「お前今何見てたの?めっちゃ人居るじゃん。戦ってるけど」

 すぐそこでは西洋風の鎧を着た屈強な戦士達が戦いを繰り広げている。

「はじめてがお外でっていうのは恥ずかしいけど、兄さんがそう言うなら…」

「俺は何も言ってねぇよ。お前の妄想に俺を巻き込むな」

 ったく、こんなことしてる場合じゃないってのに。

「とりあえずここを離れるぞ」

 立ち上がって美沙希の手を握る。しかし、

「兄さんがついに兄さんがついに兄さんがついにチャンスチャンスチャンスチャンスチャーッスチャッチャチャーッス」

美沙希は妄想の世界から帰還出来ないようだ。どさくさに紛れてだいぶ古いネタを織り交ぜている。

「チッ…仕方ねぇな」

 いまだに動こうとしない美沙希を肩に担ぐ。

「あっ…強引すぎるよぉ…」

「お前はちょっと黙ってろ」


 こうして俺達の異世界生活が幕を開けるのだった。

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