第六話 王城②
…うわぁ、びっくりー!
これが最初の感想だ。
国王陛下というから、ひげもじゃの、某7年制魔法学校の校長みたいな奴かと思っていたが…。
今目の前にいる王(?)は、自分と同じくらいの年齢の、自分より遥かにイケメンな少年だった。一瞬皇太子かとも思ったが、後から入ってくる奴がいないから、こいつが王ということで間違いなさそうだ。
王様はなんかじーっとこっちを眺めていたが、俺の服を見ると、溜め息をついた。…そんなにみずぼらしいですかね、っていうか人見てから溜め息とか失礼っすね王様。
「はぁ…この者を連れてくる指示を出した者はだれだ?」
なんか無駄にイケメンボイスで、その上圧力がある。なるほど、この辺は王様っぽいな。
「はい!!私でございます!!」
看守をしていたおっさんが元気良く応えた。お前は先生に褒められる小学生か!!ってくらい満面の笑顔だった。しかしおっさんが鎧着て、しかもさっきまで俺にニタニタ気持ち悪く笑ってた奴がやると嫌悪感しか湧いて来ないな。…うん、迂遠な表現をせず、ハッキリバッサリ言おう。キモい。
そう思ったのは俺だけでは無かったようだ。王様と、その近くに居た護衛みたいな人は、表情は変わらないが、よく見ると指が太ももを摘んでいた。この反応を見る限り、彼らは俺と同じか、それに近いくらいの思考力ができるのかもしれない。…が、まだ判断材料だ足りないな。
こちとら、「道が見えた」とか大見得きっときながら、その道を絶賛踏み外し中の身だ。ミスは許されない。
ちなみに俺の考えていた作戦では、あくまで平和的にだが、この国の最高権力者に会いに行く、というのは組み込まれていた。
印象を考えなければ、ただ予定が早まっただけにも思える。
「よくやった。おまえには後で褒美を渡そう」
「はっ!!ありがたき幸せ!!」
守りたくない、この笑顔。
看守は溢れんばかりの気持ち悪い笑顔で敬礼した。もし王の前でなければ、その場で小躍りしていたかもしれない。
だが、コイツは気づいていなかったようだが、王様の口調、かなり棒読みだったぞ。特に読心術とか知らない俺でも分かるレベル。
やはり王様も看守や衛兵の実態に辟易しているようだ。交渉の余地が出てきたな。…いや、まだだ。一度思わぬところで失敗した以上、思える所は隅々まで慎重にしなければ。
俺は王様にそっと目配せしてみた。本当にすぐれた王ならば、この意味も理解してくれるハズだ。
…果たして。
「お前たちは一度下がれ。この者の処遇が確定し次第、もう一度呼び出す」
「ははー」
やはり俺の目配せの意味が分かったようだな。コイツは期待出来そうだ。
なんだか話がとんとん拍子に進み過ぎて怖いが、多分きのせいだろう。…このフレーズ、滅茶苦茶うまく行かないフラグっぽいな。
看守&衛兵が退室するのを確認すると、
「では、貴方は此方へ」
そう言って促されたのは、小さな部屋だった。
もちろんデカいにはのだが、王様の部屋にしては小さいな、といった具合だ。
さあ、ここからが勝負だ。気合い入れていくか。
俺は王様について、部屋に入った。