第五話 牢屋からの脱出②
「……今、なんて言った…?」
「あぁ?だから日本国憲法違反だと言ったんだ!!」
日本国憲法…やっぱり聞き間違いじゃなかったらしい。
しかし俺の知っている日本国憲法では、「兄は妹にあ~ん、又は之に準ずる行為をして貰ってはならない」とかは書いていなかったはずだが…
「日本国憲法には、『個人の尊厳と両性の本質的平等を重んじる』という内容のものがある!!従って女性にそのような屈辱的な行動をさせてはならんのだっ!!」
あ、その言葉は元の世界にもあったな。
もっとも、その『屈辱的な行動』というのには、主観が伴うと思うのだが。
やった本人がそれを屈辱と感じるか、そうでないかを決めるのであって、第三者やされた方が決めて良いものではない。
この辺は、元の世界では裁判の判断が割れるとこだったんだよな。セクハラした側はそれが相手に不快感を与えると思ってなくて、でもされた側はその行為が嫌で…という具合だ。
それをこちらの憲法では、男性側が悪い、ということで統一しているのだろう。看守の話を聞くに、いつの間にか『美沙希が俺にあーんをした』から、『俺が美沙希にあーんをさせた』という風に変換されているようだったしな。
「貴様は法を侵した!!至急、王城に同行してもらうッ!!」
「王城…?」
それってどこ?
…と言うまもなく、看守の武器の柄で頭部を殴打された。
「兄さんッ!!」
美沙希の叫びを最後に、俺は意識を失った。