クリスマス・ガール 12月24 5
空気が凍った。
ノースリーブの衣装だからだろうか。
いや、コートを羽織っている、それは無い。
だがこの好奇とも期待とも取れる目線は何か。
そしてなぜ彼女たちがここに居るのか。
呆気にとられている青葉ちゃん、ニヤニヤ顔の雪ちゃん、ほか同級生&後輩ちゃんズ。
脳内で処理しきれなくなった情報が、結果だけ、そしてこれからとるべき私の最良の選択肢をを口からはじき出す。
「……死のう」
クリスマスイブは自殺者が多いっていうし……。
飛び降り……いや、この格好で飛び降りるのは嫌だ、これ以上目立ちたくない、ならどうしよう、いっそ首を包丁で刺してみるのはどうか?
血染めの美少女サンタ、いい、絵になるじゃないか……。
汚れ、そう、私は汚れ役がお似合いな赤沢千鶴……。
「とりあえず、ノルマ達成おめでとう千鶴」
青葉ちゃんの声。
ノルマ、ノルマとは何か、はるか昔に排他された体操服の一種ブルマーの事か、それともこの羞恥プレイの事か……いや、それは……
「えっ!?」
ふと我に返る。
「で、後輩ちゃんたちとの約束、守れてよかったねえ、千鶴?」
雪の声、そして周りにはやはり同級生&後輩ちゃんズ。
今度こそ脳内で情報処理が追いつかない。
「これで百余名、で、雅さん楓ちゃんはもうすぐ……っと」
何やらメモしながらつぶやく青葉ちゃん。
「さあさあさあさあ」
ぼーっとしている私の肩をつかみコートをはぎ取る雪。
そして私をある一席に促す同級生たち。
私は訳も分からず、場の勢いに流され、流され……。
カラン、と店に備え付けてあるベルが鳴る。
来客を知らせるそれは私に一種の条件反射をもたらした。
「いらっしゃいませっ!」
「……あらあら。ふふっ、もうすっかり店員さんが板に着いちゃったのかしら」
「青葉ちゃんメリクリー!」
落ち着きのある声と幼い声。
「楓ちゃん、雅さん、いらっしゃい。ちょうどこれからお楽しみですよ」
「ぉお……おう……」
思考が……思考が展開に追いつかない……。
「ピアノ、弾けるんでしょ?なにか一曲、クリスマスっぽいのをお願い」
青葉ちゃんが言う。
混乱の中私が促された一席にはキーボードが置いてあった。
コンセントがあればどこでも使える便利なそれは……。
「雪、私の部屋から持ち出したでしょ……」
友人は無言でピースサインをする。
私はいろいろ(羞恥心だとか考えだとかを)放棄して、このどうしようもなくどうしようもない感情を鍵盤にぶつけた。




