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喫茶『Amulet』の日常  作者: 桐沢 綾
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クリスマス・ガール 12月24日 1

規則正しい生活リズムというやつは、寮生活一年目で私が会得した数少ないスキルのうちの一つだ。


朝から学年全員そろっての朝食。


寮住まいの学生の多さから、朝の食堂は大変な混みようだ。


一応六時半から八時までと、かなり広く時間を割いてもらっている感はあるけれど、八時前となると人でごった返すことを知ってから、私は毎朝六時には食堂に居た。


「おはよー、あいかわらずおはやいことで……」


同室の雪が少し遅れて来る。


「おはよ、雪ちゃん。あったかいよ」


部屋にもエアコンがあるにはあるのだが、食堂の方が暖かく感じる、何の違いかはわからないが、とにかく、寒い部屋を出て、寒い廊下を渡って、その先にあるこの食堂はやはり暖かい。


「……ぁ……ぉお……」


雪は食堂に入って変な息を漏らしながら私の隣に座る。


「イブだねぇ……」


「そうだねぇ……」


昨日が23日だったのだ、翌朝、つまり今日は24日、バイトにおいて決戦、そして後輩ちゃんたちとの決戦(一方的に謝るだけ)が始まる。


寝ぼけた頭の雪と話をしているとガラスのドアから数人の後輩たちが入ってくる。


『おはようござーまーす』


「お、おはよう」


「……はよー」


来た、来てしまった。


言う、言わなくてはならない。


意を決して立ち上がる。


「あ、のっ!」


「千鶴先輩ってピアノ弾けたんですか!?」


「ぅえっ!?」


勢いをそがれた。


「ま、まあ、昔習ってて、今も趣味程度で続けてはいるけど……」


「すごーい!」「素敵……」「かっこいいですー」


三者三様の反応。


いや、流されてはいけない、言いたいことを言わねば!


「あのねっ!」


私にしては大きな声に、三人はびくりとする。


うち一人がおずおずと聞いてくる。


「いきなりどうしたんですか千鶴先輩……?」


「あのっ、今日はそのっ、ごめんなさい、催し物っ」


「あー、雪先輩から聞いてましたよ、場所くらい全然ですよー」

「だよねー」

「ですよー」


「えっ、あの、私もっとこう、失望されるかと……」


『しませんよ!』


「まーまー、千鶴はちょっと落ち着きなって、朝ごはんできたみたいよ」


いつの間にか調子を取り戻した雪に促され、その場は解散の流れとなったが、朝食の後顔を合わせた後輩ちゃんたちも似たような驚きというか、感嘆というか、ともかくその場にふさわしくない反応を示して帰ってゆくのを、私は不思議に思うのだった。

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