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喫茶『Amulet』の日常  作者: 桐沢 綾
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34/50

クリスマス・ガール 12月16日 夕方

学校が終わって、少し商店街をフラフラした後、私は喫茶『amulet』に向かった。


お客が入っているのをほとんど見たことないその店は、何故か潰れることなく、ひっそりと営業を続けている。


店主の岩永青葉とは、高校時代の先輩後輩の関係で、昔彼女に助けてもらって以来、それなりの友好関係を保っている。


一面ガラス張りとなっているその店の外から、カウンターでぼんやりとしている青葉を見つける。


「……ほんと、なんで潰れないんだろ」


潰れてほしいわけではないが、どうみても赤字だろう。


そんな店で雇ってもらえたりするのかと、今さらながら考えてしまう。


「……ま、行くだけ行ってみようか」


寒さに耐えかね扉を開けると、カランコロンと子気味良い音を鳴らす鈴が来客を告げる。


青葉は一瞬驚いたようにこちらを見たが、私の顔を見た途端、またぼんやりと空を見た。


「こんにちは、青葉先輩」


一応、今回は店の経営者としての青葉に用がある。


私と二つしか離れてないのに自分の店を持っているなんて、やはり尊敬に値する。


だからなのか、自然と「青葉ちゃん」ではなく、「青葉先輩」と呼んでしまった。


これは私の癖みたいなものだ。


「いらっしゃい」


いかにも気怠そうにそう言った青葉は、こちらに顔を向けたままカウンターに寝そべってしまった。


外の寒さから解放された私は、青葉ちゃんの態度もあってか、力が抜けた。


「あー、ホットココア一つ」


注文すると、再び驚いた顔をして、彼女はまじまじと私の顔を見た。


「……な、なに?」


たじろぎながら問うてみる。


「いや……客として来るなんて、珍しいこともあるもんだと思って…………」


し、失礼な……いや、確かに普段は注文したりしないで、おしゃべりだけして帰ることの方が多いけど……。


「……そんなときもあるよ」


適当に誤魔化すと、ふうんと興味なさげに反応してココアを準備する。


私はカウンター席に座って、青葉ちゃんが仕事するのを眺めてみる。


いかにも面倒くさそうだが、彼女は淀みない動作で手際よくこなす。


流れるような動きに、つい見とれてしまった。


「はい、お待たせしました、お客様」


少し冗談めいた口調で言うものだから、思わず笑ってしまう。


「ふふ、いただきまーす……」


何度か息を吹きかけ、口をつける。


口の中に広がる甘み、そして香り。


とても温かくて、冷え切った体はすぐにあったまりそうだ。


「それで、今日はいったいどうしたの?」


突然の問いかけに、少しビクッとしてしまう。


「ん……ちょっと、頼み事というか、相談事というか……」


素直に答えると、またかと言った顔をして、ふうとため息をつく。


「いいよ、言ってごらん」


彼女が優しく微笑むと同時に、私は少ないボキャブラリの中から言葉を選び始めた。

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