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クリスマス・ガール 12月15日
十二月も半ばに入り、街もクリスマスムードに包まれ華やいでいる。
冬の寒さに凍えつつ、コートのポケットから財布を取り出す。
彼女、赤沢千鶴は悩んでいた。
それはなかなか伸びない身長のことでも、間近に迫った受験のことでも、ましてや、ほとんど膨らまない胸の事でもない。
「……お金が、ない」
大量の小銭であふれる財布を見て、ぽつりと呟く。
何か欲しいものがあるわけでもない。
寮生活とはいえ、生活費は家族が出してくれているし、無駄遣いもしたことがない彼女は、金欠というものの恐ろしさをその18年の人生で初めて味わった。
「まったく……これも全部青葉ちゃんのせいだ……」
人のせいにして、自分は悪くないと言い聞かせる。
いや、切り詰めて使ったり、先月に浮かせておいた分を繰り越したりといくらでもやりくりできたはずだが、それは考えないことにする。
とばっちりもいいところだと聞こえてきそうだったが、やはり千鶴は金欠だった。
「……アルバイトでも、してみようかな」
受験に差支えない程度の、短期のバイトや日雇いのものもあるだろう。
解決しそうな悩みは、彼女の足取りを軽くした。
子供っぽいと思われるかも知れないが、今は周りに誰も居ないし、いいだろう。
18歳の少女は、スキップしながら寮へ帰った。




