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喫茶『Amulet』の日常  作者: 桐沢 綾
第二章
23/50

2-14 失敗

持ち物を確認したところ、幸いにも財布やマンドレーク、酒の入った小瓶は残っていた。


もしも、工藤がまた襲ってきたら、いやまあ間違いなく戦わなきゃいけないし、そうでもしなきゃ無事に帰れないから、絶対闘うことになるんでしょうけど……。


「それにしても、こんな密室で蝋燭何本も燃やすとか、酸欠になったりしないか……?」


むしろいままでよく無事だったと思う。


「……ん」


そして雅さんは相変わらず具合が悪そうで……って、まさにそれは酸欠なのでは……?


妖怪の力を借りれば、壁を壊して外に……いやまて、扉もないのだ、もしかしたらここは屋根裏部屋……?


この蒸し暑さだ、地下ではないだろう。


「とすれば出口は……下?」


床を見渡すが、一面コンクリートタイルが敷き詰められているだけだ。


焦りに冷静さを欠いていると、天井の一部分が開き、そこから梯子が下りてきた。


「マズっ……」


僕は雅さんに小声で「何があっても動かないよう」言い含め、自分たちが倒れていた位置に再び寝ころんだ。


片目だけ開けて梯子があるあたりを見ると、気を失っているのか、楓ちゃんは工藤の腕に抱えられ、だらりと脱力した様子だった。


良かった、無事みたいだ……。


僕は小瓶を握りしめ、寝たふりをしつつ、音に集中する。


どさっと床に何か置く音、おそらく楓ちゃんだろう。


そしてこちらに歩み寄る足音……。


足音が僕の真横で止まったかと思うと、腹部に鈍痛が走る。


「……っふ!……ゴホッ」


思わず咳き込む。


恨みがましく工藤を睨みつける。


手には先ほどのサバイバルナイフが握られていた。


追撃を仕掛けてくるかと思って身構えたが、工藤はそのまま雅さんを蹴り飛ばした。


「雅さんっ!」


蹴られた雅さんは小さく咳き込む。


「お前らにいいものを見せてやるよ」


工藤は心底楽しそうに言った。


楓ちゃんに歩み寄り、僕たちにしたように容赦なく蹴り飛ばす。


「お前っいい加減にっ……!」


つい頭に血が上ってしまった。


「ぅ……」


小さくうめいた楓ちゃんを確認して、工藤はこちらに歩み寄る。


そして再び容赦なく、今度は顔面を蹴りつける。


「っは……」


すっごい痛い……。


しかし腕は動かさない、縄がほどけているのは気取られてはならない。


工藤を睨みつけると、彼は厭らしい笑みを浮かべていた。


「お前ら、俺が最近世間を賑わせている殺人犯だったら、どうするよ……?」


下衆な婦女暴行犯に誘拐されたと思っていたら、そっちでしたか。


いざとなれば妖怪になる、そう決めて啖呵をきる。


「だからなんだよ下衆野郎、楓ちゃんに手出ししたら、僕が許さないからな」


そう言うと、工藤は気持ち悪い笑みで満足そうにうなずいた。


「そうかそうか……」


「じゃあ、お前は最後だなあ……」


工藤は手にしたナイフを雅さんに向けて放った。


一回転もせず、綺麗に刃先が雅さんに向いた頃、ソレは音もなく雅さんの肩に突き刺さった。


「お前っ……!」


僕が叫ぶと彼はまた厭らしい笑みを浮かべる。


「お前はさっき、楓ちゃんに、といったからなあ……?」


「あ……っぐぅ……」


工藤は肩に刺さったナイフを踏み、深く差し込む。


雅さんの苦しげな声を聞く。


僕のせいだ。


工藤がこの部屋に入った時こそが最大のチャンスだったのだ。


慎重すぎたのがいけない、おかげで雅さんが傷つく羽目になった。


人間相手に妖怪の力を使って倒すのは、きっとマズい。


殺してしまうかもしれない。


だがもう、いいだろう。


ふらりと立ち上がり、瓶を開ける。


工藤は、縄がほどけていたのも分かっていたかのように、にやけたままこちらを見ている。


僕は一気に酒を飲みほし、彼女に身を委ねた。

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