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2‐1 捕食者
くちゃ……くちゃ……。
ねっとりとした水温が暗闇に響く。
彼にとって、暗闇で獲物を狩るのは造作もないことだ。
くちゃ……くちゃ……。
じっくりと味わうように獲物を食らうその姿は、獣そのものだ。
ただ獣の狩りや食事と違うのは、獲物となった生き物が宙吊りにされ、その真下に瓶が置かれ、そこに血液を溜めるために体に傷をつけながら、じっくりと舐るように食らっているところだろうか。
獲物となった人間の女性は、足が本来曲がるはずのない方向にねじれており、口からは真っ赤な泡を吹いている。
細かく、そして絶妙な深さの切り傷が彼女の体を覆う。
目は空洞となり、そこにあった眼球も今は捕食者たる彼の一部だ。
彼にとって見慣れたその日常は、一般人たる我々人間からすれば異常そのものだろう。
そしてつまるところ彼はやはり異常なのだ、異常者たる存在が行う異常を、一般人だった彼が行っているという点において、だが。




