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プロローグ

処女作です、趣味で書いている物なので、どこかおかしい点などあるかもしれません。

ご意見、ご感想などいただけると嬉しいです。


9/13

エピローグとプロローグの間違いに気づいて直しました、申し訳ありませんでした。本文に変更はありません。

いやあ、直せるものなら直したいですけどまずは恥ずかしい、とても恥ずかしいです。


ちょこっと読みやすいかと思いまして、実験的に一部だけ1行ごとに改行を用いてみました。

世田谷区某所にある、隠れ家的喫茶店『Amulet』。

知る人ぞ知るというか、酔狂な人しか来ないというか、そんな経営も危うい、趣味が高じて始めたようなこのお店だが、コーヒーの香りで満ちた店内のカウンターからガラス張りの窓を通して見える景色は僕のお気に入りだ。

腰まで伸びた白髪、黒いリボンで結われたポニーテールを靡かせながら、カウンター内の椅子に腰掛ける。

僕の家系は、何故か長女だけが生まれつき白髪になるらしい。子供の時は周囲にからかわれたりしたが、僕はこの髪が気に入っている。

夏の終わり、季節の変わり目で少し肌寒さも感じる午後四時の緩やかな空気、駅から離れたこの店の前を歩く主婦や子供達はどこか楽しげで、見ているこっちが幸せになってしまう。

……いけない、眠くなってきた。

「今日はもう店仕舞いかな」

作り置いたアイスコーヒーをグラスに注ぎながら独りごつ。

「まあ、日曜だもんね」

アイスコーヒーの程よい苦みに眠気覚ましを期待したが無駄だった、どうやら本格的に眠いらしい。

「エスプレッソ飲んでも眠気が覚めなかったら、寝よう」

経営者にあるまじき判断、一社会人が「眠いから今日は帰宅します!」なんて言えばクビにでもなるだろうか、個人経営の強みである。

エスプレッソ用の小さなカップをセットして、豆を落とし、機械から直接注ぐ。

エスプレッソ特有の香りに鼻腔が刺激される。

「ん、いい香り」

カップを持ち、いざ飲もうとしたその時、満面の笑みとともに店のドアが勢いよく開いた。

「あぁあおぉぉばせぇぇんぱぁぁぁぁぁぁい!!!!」

僕以外に誰もいない店内に彼女の元気な声が木霊する。

「うるさい」

勢いのままに叫んだ明朗快活と言う言葉の似合う、茶髪を肩口で切りそろえた少女、高校時代の後輩の赤沢千鶴に、僕はいつも彼女に抱いている感想を包み隠さず四文字で述べた。

「そんなことより大変なんですよっ!」

僕の非難を無視して彼女は叫ぶ。

「知りません、もう今日は店仕舞いなので帰ってくださいお客様、あと一々叫ばなくても聞こえるんでせめてもう少し静かにしてください」

「あー……っと、すみません!あと、今日はお客じゃないんです!青葉先輩に相談があって!」

「……何さ」

千鶴こうも騒いでいるときは絶対にロクなことじゃない、経験上それは明らかだ、聞いてから後悔した。

コホン、と咳払いし、真剣な表情になる千鶴、それだけで先程までの穏やかな空気が不気味な冷たさを帯びた。

これは、余程深刻な話らしい。

「飯田先輩のことは覚えてますよね?」

「飯田くん?ああ、いたねえ、柔道部のギャーギャーうるさいヤンキー一歩手前のあの子でしょう?彼がどうかしたの?」

こんな張り詰めた空気はあまり心地いいものではない、僕は少しおどけた風に、場の空気を和らげる。

「うわ、相変わらず毒舌……いやもう性悪ですね……」

「僕は嫌いな奴はとことん嫌いだから」

「ええと、その飯田先輩が三か月前から行方不明らしいんです」

「……で?」

「これは、“アレ”絡みかなと」

「…………」

ああ、やっぱりロクなもんじゃない、“アレ”絡みで昔千鶴を助けてからというもの、千鶴はこういう話を持ってくるようになった。

軽く舌打ちしてしまう、クラスの元問題児飯田の為に僕がどうして面倒事に首を突っ込まなくちゃならないのか。

「せ・ん・ぱ・い?」

期待するような上目遣い、作った声、千鶴は年上に物を断わらせない方法を熟知しているのだろうか、すごく断りたい。

「……はぁ、わかったよ、詳しい情報を教えてもらえる?」

「は~い」

自分の要求がまかり通った喜びに満ちた声を聞くと、やはり断るべきだったと意地の悪いことを考えてしまう。

これから起こるであろう面倒ごとのことを考えると、尚更だ。

こうして僕の日常は、いつものように非日常へと塗り替えられた。








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