005
ああ、流石にやばかったよな、さっきの。絶対殺される…………筈なんだけど。
さっきからこっちのことちらちら見ては顔を赤くして。
ああもう、余計かわいく見えてくるよ。なんだよお前恋する乙女かっ!
「シ、シカシ、サッキは運ガ、良かっタな。無事にオマエの家に辿り着く」
「そうね、モンスターに気づかれなかったし」
『それはー運が良かったんじゃなくてー。あたしがまだ《実体スイッチ》を押してないからですよー』
「へーそうなんですかっ!? だれだ、お前」
見るとさっきまで二人しか居なかったシーニャの部屋に仮面を付けたピンク色のツインテールの少女が居た。普通に会話しちゃってたよ。
『お前は失礼ですよー! ダーリン』
「だ、誰がダーリンじゃ!」
「シグル、ブン殴っていいか」
「やめてください」
怖いよ、怖いですよシーニャさん。恐ろしすぎですよ。
『やめて、二人ともあたし争わないで!』
「誰が」
「争ってない」
『そうだよね、私なんか』
いや、そうじゃないだろこいつが誰かって話だろ。
「いい加減誰か教えてくれないか」
『あたし? あたしはーこのゲームのGMのエレンで~す』
「げ、GM!」
『そ、GM、GM』
「そんなわけ無いじゃない。こんな私達ぐらいな子どもが」
ま、そう思うよね普通。俺だって信じられないよ。こんぐらいの子がGMだなんて。
『ほんとだってば、じゃあ如何したら信じてもらえるの?』
「そうですね……たとえば今この場に《騎戦士》と《暗殺者》専用の武器を出し五千円、ポーション十個出す。そしたら信じてあげますよ」
『りょうかーい! 《ハルバソード》、《ポイゼルダガー》と五千円、ポーション十個』
「ホントに出てくるとはね」
『すごいでしょ?』
「確かにすごいわね。じゃ、コレもらうね」
シーニャうまく使ったな。コレで武器と金が手に入った。戦わずして金を得た。
『あれ、コレってあたしうまく使われてない?』
「まあ、信じてもいいでしょう。ですが仮にGMとして、先ほどの《実体スイッチ》ってなんですか?」
『ああ、それね……
エレンと名乗った少女が《実体スイッチ》について、話そうとした瞬間。大きな音の警報のようなモノが鳴った。
「なんだよコレは」
『嘘、何で? まだスイッチ押してないのに』
どういうことだ、まだ押してないって。
『あいつ等、動き早すぎ。まさか、ここまでとは』
「どういうことだ。あいつ等っていったい」
『詳しいことは後で、二人とも装備整えて。今から移動する。さっき武器上げたでしょ。装備して』
詳しいことって。
『転移、する。白き巨人……あれ? 転移しない。どうして』
「如何したのよ」
『GMの権限が無くなった』
「嘘……」
そんなことってあるのか……。
「どういうことだよ」
『あたし、会社内で敵対していたの』
エレンの話によると会社内で敵対していたグループによってこのゲームがハッキングされてしまったらしい(本人の話によるともう少し時間がかかるはずらしいが)。そのせいでGMの権限も奪われてしまったらしい。
「さあ、これから如何するんですか」
『そうね、もう一回、最初っから自己紹介』
そう言うとエレンは仮面をはずした。
「あたしの名前はエレン、よろしくね」