002
「ウェルカムツー、ケネディドワード。プレイヤーの諸君、ここは何処か分かるかな? 既に気づいている人もいるだろう。そう、ここは《ケネディドワード・リンク》の世界だ」
どこから聞こえるのか分からない図太い声がそう話している。聞こえてるのではなく。頭に直接言葉を送っているような気もする。
「詳しくは君達がこの世界に来る時に一緒に持ってきたであろう、取扱い説明書を読んでくれ。では、さようなら」
何処からか、「どういうことだよ」。「元にもどせ」。などといった言葉が聞こえてくる、どうやら俺達以外にも、NPC以外の人間がいるらしい。
だが、その言葉に反応もせず空は元の色を取り戻した。
「説明書、って言ってたよな」
「ええ」
「見てみるか」
※
訳がわからなかった。ただ説明書はメインウィンドウはこの説明書に附属されている薬を飲まないと呼び出せません。とだけ書いてあった。
「とりあえず、飲んでみるか」
「毒。じゃないわよね」
大丈夫だろ。というか、大丈夫と思うしかない。そうでないと何もかも進まないからだ。
薬を飲んですぐ、身体に違和感が、右手の甲が痛い。不意に襲われた痛み、原因は甲に埋め込まれた黒い長方形のモノにあった。
「なんだ、コレ。いつの間に」
「ホントだ、何コレ」
ためしに触れてみる。すると目の前にタブが現れた。
「これって、ステータス画面だよな」
「そう、だと思う」
よく見ると右端に自分の登録したキャラクターネームが書いてある。
「お前、ちゃんと出てる?」
「うん」
なら、いんだけど。俺からは相手のステータス画面が見えない、そういう使用なのだろう。
「そういえばお前、キャラクターネーム何にしたの?」
「え、いつもどおりだけど」
「じゃああのシーニャって名前?」
「そうだけど。そういうあんたは?」
「毎度お馴染みのコウジだけど」そう言うと「はあ」とシーニャはため息をついた。
「あんたいい加減本名使うのやめなよ」
「安心しろ、今回はコウジじゃなくてシグルだから」
「だといいけど」
そんなことはどうでもいい、ここから如何するかだ。タブの中には《装備》、《スキル》、《アイテム》他に幾つかのメニューがある。
その一番下には《ワールド》というメニューがある。
「なんだろな、この《ワールド》って。他のゲームとかでは無いよな」
「そうね、ちょっと見てみる?」
そう言いながら二人で見てみたところこのゲームの世界観についてが書かれていた。
「なるほどね、この世界観のことだね」
「そのようね」
他には《ゲーム進行率》。
「《ゲーム進行率》…………今は0%か、100%になったらどうなるんだ?」
シーニャは少し考え、「元の世界に戻れる…………とか?」
「それだ、きっとそれだよ!」
「そうかな?」
そうとしか考えられない。だって、100%になったところでこの世界で何かあるとは思えない。
「まあ、そうとわかれば、善は急げ、他の人が行動する前に、さっさと行動しようぜ!」
「そうね、でも。如何するの」まあたしかに、そうなるとしたら如何すればいいのだろうか。こういった時は、
「じゃあ、ひとまず街らしきところに行こうぜ。クエストとか受けたり装備買ったりしなきゃだし」
そんなことでひとまず俺達はショッピングモールを出て、街に向かおうとした。
「ちょっと待ってよ、外はモンスターが跋扈してるのよ。如何するのよ、私達武器とか持ってないじゃない」
当然ですね。
「武器とか無いかな、剣とか」
「そう言えば職業の初期装備とかないのかしら」
そう言いながらシーニャはタブの装備を開いて「な、にコレ」
「どした?」
「武器アイテムが、というかアイテムが無いのだけど」
「お金とかは?」
「………………無い」
如何しろと、このゲームのGMは我々にどうしてほしいのですか。
「素手で戦えというのか?」
「そうじゃないの」
ステータスの割り振りもされていないので当然のことに弱い。
「そう言えば……あんた職業なんにしたの?」
職業か。
「俺は《騎戦士》だよ、運良くこのRPGは職業変更システムがあるらしいから一応基本職業を選んでみた、サブ職は《料理人》」
《ケネディドワード》にはサブ職業がある。
基本職業で上げることのできないステータスだったり、上級職業のためのコストだったり、モノによって様々だ。
「サブ職が料理人って、似合わないわね」
「うっさい、いいじゃねえか。戦士系じゃ上げられないステータス上げられるんだよ」
戦士系は力やHPを上げれるが器用さなどが上げられない。そのために《料理人》を選んだだけだ。
「そういうお前はどうなんだよ。職業なんなんだよ」
「私は普通に《暗殺者》でサブ職が《狩人》だけど」
普通に《暗殺者》ってなんだよ。