第24話〜ロケットと花火〜
「…………ここですね」
「ここでっす!」
「間違いないんとちゃう?」
僕たちは今、とある大豪邸の門の前に立っている。 ………もちろん朝食を"きちんと"とってから。
「ってか、普通、誘拐犯が潜む住所なんて自ら手紙の裏に書かねーけどな」
「単なる馬鹿じゃない」
「どうしようもない馬鹿ですわ」
そう……あの馬鹿げた犯行文の裏に、きちんと犯人のアジトだと思われる住所が書かれてあったのだ。しかも達筆だった…。
ためしに住所の通りに行ってみたら、この大豪邸に着いたわけだ。
自分の身長の倍以上はある門の向こうには、美しく手入れされた庭が広がる。中心に噴水があり、薔薇の花のアーチをくぐると、この豪邸に入れるらしい。
「ってゆうか、まだ牛乳くさいですよぉ〜風花さん、どうしてくれるんですかぁ〜」
「うるっさいな〜また牛乳かけるよ?」
「ふぇッ」
首をすぼめる藍さん。その反応が気に入ったらしく、風花さんは次々と言葉で藍さんをいじめる。
「藍の牛乳プレイ、萌えだったよ〜〜オホホホホ。結構エロかったしね〜」
「なななな、や、ヤメテ下さい〜」
あ〜あ…また始まったよ、言葉責め……。さっき、とうとう藍さんがキレて食堂半壊したのに…またキレちゃうじゃん。というか、風花さんの精神を半壊してほしい。
「ハイハイ、喧嘩止めて下さいよ〜流音ちゃんを助けないと!」
「次は牛のミルクじゃなくて、ユウのミルクをかけるよ〜」
「えッ!!?ちょっ!まっ!!ナニ言ってるんですか!!!止めて下さい!!」
「ぜぜぜ、絶対嫌ですよ〜うわぁぁぁん」
「え!?なんか………えッ!?なんで、そんな必死に拒否するんですか!!完全否定ですか!?い、いや!!!そういう意味じゃなくて……!違うんですッて!つか、なんでみかんちゃんと伽凛さん、素でひいてるの!!」
そんな僕の叫びをみんなが白い目で見ているとき、門の右側に設置されているモニターに電源が入った。
ブッ―――……
『こんにちは皆様。ご機嫌うるわしゅう』
画面には綺麗な女の人が写っていた。女の人は優しく微笑むのだが、毎回恒例の下ネタトークを止める事はできない。
「ホンマにひくわ、ユウ。どうせ牛乳プレイ見てるときから、下半身ロケットになってたんとちゃう?」
伽凛さんに完全無視されているのだが、諦めずに一方的な会話を続ける。
『よくここまで来たわね、誉めてあげますわ。』
「ロケットに、危なく火がつくとこだったんじゃないでっすか?火花パーンでっすよ。そして藍に届くように火花を飛ばすんでっすね?」
オイテメェ、ふざけんな。ギリギリトークじゃねぇか。
『私、高井田華子と申しますわ。ホホホホ、貴女方の大切な家族は―……』
「穴には棒をいれなきゃなんないしね。ズコズコと…。ウフッ…アハハハハ」
『ちょっと!!聞いてるの?!貴方達!!』
ベタなタイミングでツッこむ 女の人、改、高井田華子。うん。僕はちゃんと聞いてたよ。
聞いてないのは、口から悪口と下ネタしか発せない馬鹿だけです。