第16話〜恋愛小説〜
「あっ…あ〜ソコでっす!!そこもっと強く」
前回に引き続き、まだミカンはユウの手から逃れることは出来ていなかった。 職員室に逃げ込んでいる桜子たちにもその声は聞こえる。
「チッキショォォォ!!!やっぱミカンを見捨てられへんわあぁぁ!!!」
と、何故か袴姿で職員室を出る伽凛。
「あぁっ!!そっち行ったらヤラれちゃいますよぅ!」
「大丈夫や!!ウチ、実は実家が神社なんやねんで!!ついでに本家は寺さかい、バッチリ除霊できるわ!!………多分」
お前の一言は信用を無くすな。
伽凛はだだだだだだ〜と下駄箱の裏に走った。
そこには――……
グリグリグリグリ…
「ひぁっ!!あはぁっあんッ」
相変わらず甘い声を出すミカンと、
「にょ〜にょ〜」
相変わらず除霊されていないユウだった。
グリグリグリグリ
「あ〜メッチャ気持ち良いでっす……あん…あふっ」
グリグリグリグリ
ユウはミカンの肩を揉んでやる。
その度にえっちな声をだすミカン。
ちなみにこの二人がやっているのは、えっちなことではなくて………
「なんやそれ?マッサージ?」
マッサージでしたぁ!!
「か、伽凛!!気持ちいでっすよ!!!あはんっなんか、ツボを的確にっやんっ」
なんか、ホラ、読者がこの話全部エロいって思われちゃうじゃん。ちなみに、ミルクも風花もマッサージでイきました。
やめてよね、そーゆー紛らわしいえっちな声とか。
「ってかソコ退き。除霊するで」
「にょ!!!にょ〜にょ〜!!」
伽凛に気付いたユウは、マッサージを止め、暴れだした。
伽凛は深呼吸をし、精神統一をはかる。
両手を合わせて、お経っぽいのを唱えだした。
「ハンニャンカムソナ。ハンニャンカムソナ。アニョハセヨ。ハロー。ボンジュール。ア、ツギ、ナンダッケ?ハンニャンカムソナ。ッテカ、ブッチャケ、オキョウナンテ、シラネェヨ。かぁぁぁぁぁぁあつ!!」
おい、なんか最初は北朝鮮語っぽかったぞ?途中から世界でこんにちは?
ってかお経しらねぇなら言うなよ。
で、そのお経で除霊できたかというと…………。
「うっ…にょっ…!!…女体………無念…!」
除霊できてました。
ユウの体は狂ったように、盆踊りをした後、倒れこんでしまった。
「ス、スゲェじゃねぇか伽凛!!!」
「伽凛、ただの馬鹿じゃなかった。これ、好感度あがった」
「すばらしいですわ。たった独りでここまでやるなんてっ!!」
「ってか、風花さん起きないんですけど〜!」
職員室から飛びだす桜子たち。プラス熟睡している風花。
「伽凛、すごいでっす!!さすが巫女さんでっす!!」
「せやろ?ウチを讃えなアカンで。ウオッホッホ!」
こんな馬鹿げた巫女なんか、誰も欲していない。
「あれ?………どうしてアタシここにいるのよ?…………ってアタシ下着姿じゃん!!!」
「ミルクも起きたんか」
ミルクは急いで廊下にばらまかれた自分の服を着る。
ミカンは気絶しているユウに、臭そうな靴を下駄箱から取り、鼻に当てていた。
「………うっなんか臭っ!!!キタねぇ靴鼻にあてんなよ。マジ臭い!!」
見事目を覚ましたユウ。むっくりとからだを起こした。
除霊はできたのだが、なにか不陰気が違う。
「お前、ユウちゃうやろ?誰や?」
「あ?オレ?オレ、ヤスヒトだよ。ほら、去年死んだ」
さて皆さん、ヤスヒト君を覚えていますか?
「レタスとカビ」
で名前だけでたヤスヒト君。
「元塚が除霊されて、よかった〜マジあいつうぜぇし。あ、ユウ君だっけ?ごめんな。勝手に体借りて」
「何の用や?さっさと出ていかんと、除霊するで?」
「いやいや、そんなオッカネーこと言うなって。オレはミルクに用があって来たんだよ」
「え?」
ミルクは顔を赤く染めながら、ヤスヒトに近付く。
まだヤスヒトが話しているなんて半信半疑なのだが、あの軽い口調はヤスヒトに違いない。
「久しぶり、ミルク」
「えっ、あ……ヤスヒト、君」
見た目はユウなのに、何故か大好きだったヤスヒトに見える。
「オレさ、死んでから、ずっと後悔してたんだ」
「何を?」
するとヤスヒトはミルクを抱き寄せて、口付けをした。
一瞬だけ時間が止まった様な感覚。
あまりにも突然のことで、伽凛もアホミカンも何も言えなかった。
「死んで後悔したんだ。ミルクにちゃんと好きって言えなくて」
「あっ………ヤスヒト君」
思わず涙がミルクの目から溢れだした。
ずっと想いつづけていたヤスヒト。でも、自分の気持ちを伝えることはできなかった。
「アタシも、ずっとずっと、好きでした。でも、それを伝えれなくて……」
ヤスヒトは優しく微笑み、ミルクの頭を撫でてやる。
「ありがとう。それじゃあ、オレ逝くね。盆には会えるから」
笑いながら言うが、どこか寂しさを隠すヤスヒト。
「ユウに、体借りてゴメンって言っておいて」
泣きながら頷くミルク。
「大好きだからね、ヤスヒト君」
「オレも、大好きだよ」
そう言い残し、ヤスヒトは消えた。
「ふにゃらぁっ」
またもや気を失うユウ。
誰もが、中身が違うだけで、こんなに人は変わるんだ、と思った。
体の力が抜けたユウはミルクの方へ倒れこみ……
ズルッ!!!
「キャァァ!!」
ミルクのスカートとパンツを下げてしまいました。
ほら、人間って倒れそうな時、なにかに捕まるじゃん。それだよそれ。
「ユウの、馬鹿ぁぁぁぁぁ!!」
おしまい