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夜市《よいち》

粽子ちまきを六個」


屋台の喧騒の中から、すぐ前に立つ母親の声が鴉児の耳を捉える。


やっぱり、今日も六個だ。


少年は肩を落として、手に持った花籠を見やる。

しなびて本来の緋色から黒っぽく変色した薔薇が、籠の半分以上を埋めている。


まだ生乾きの薔薇の、むせ返る様な芳香が少年の鼻先よりやや上にぶら下げられた母親の花籠からも漂ってくる。


母ちゃんの籠にも花がいっぱい売れ残ってるんだ。

どれだけ余っているのか、鴉児は背伸びして覗く気にもなれなかった。


籠の八割以上花が売れた日は十個、六割ぐらいけた日は八個、そうでない日は六個だけ母ちゃんはいつも夕飯に粽子を買う。


いつも花を売りに行く公園の木が葉を落とし、散歩する人が少なくなってからといもの、ずっと晩飯は六個の日が続いている。


「行くわよ」


人混みの中、母親に手を引かれながら、鴉児は腹を擦って空を見上げた。


今度、流れ星を見たら、毎晩粽子が十個買える様にお願いしよう。

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