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柄杓星《ひしゃくぼし》

「消えないお星様だっていっぱいあるよ」


鴉児は小さな口を尖らせた。


「あの柄杓星はいつだって北の空に見えるし」


言いながら、鴉児は諦めきれずに北斗七星に目を凝らす。

さっき見た星は、あの柄杓の、ちょうど柄の真ん中を切るようにして流れたのだ。


「すぐ消えるから、流れ星なのよ」


諦めなさい、という風に母親はひっそりした声で告げると、少年の手を引いた。

母親の手から伝わる温みに、鴉児は自分の指先が冷え切っていたことに気付く。


「今日は寒いから、早くご飯買って帰りましょうね」

「うん」


鴉児は母親の手を握り返して、こくりと頷いた。


本当は、今日「は」じゃなくて、今日「も」寒いんだ。

多分、明日あしたも、明後日あさっても……。


「早くあったかくなるといいね」


口に出すと、余計に暖かい日が遠くなる気がして少年は微かに身を震わせる。


「すぐに、春になるわ」


信じなさい、と言い聞かせる声で母親は答えると、小さな手を握る力を強めた。


早く春が来るよう流れ星にお願いしたい気持ちで、鴉児はまた北斗七星を見上げる。


それは、まるで北の空に浮かぶ、氷で出来た巨大な柄杓の様に映った。


もしかすると、夜にいつも見える星は凍っていて、流れ星はあったかいお湯で出来ているから、すぐに空の上を流れていって見えなくなってしまうのかもしれない。

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