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晨星
少年は立ち上がると、膝にこびり付いた雪を払うのも忘れてまた歩き出した。
足は自然といつも花売りへ行く公園に向かう。
きっと、母ちゃんは先に花売りに行ったんだ。
頭の中で、そう呟く声がした。
公園に近づくにつれて、踏みしめる雪は次第に柔らかさを失い、足の下で軋んだ音を立てる。
だが、鴉児にはむしろ快かった。
おれ以外の足音が聞こえたら、それが母ちゃんだ。
公園に辿り着くと、一晩空けてすっかり様変わりしていた。
昨日までは葉の殺げた枯れ木そのものだった植木が、一斉に雪の花を枝に咲かせている。
人にたとえれば、まるで乞食ばあさんから着飾った若い綺麗な女に化けたみたいな変身振りだ。
これなら寒くても公園に来る人がいっぱいいるぞ。
今日なら、花がいっぱい売れる!
少年は思わず雪の上で飛び跳ねた。
すると、バサリと背後で何かが落ちる音がして、鋭い叫びが耳に飛び込んできた。