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晨星
「あっ!」
転んだまま空を見上げた少年は思わず息を飲んだ。
藍色が薄まって水色に転じていく西の空を、真っ白な星が尾を引きながら、緩やかに流れ落ちていく。
流れ星だ。
やっと、もう一度出て来てくれた。
鴉児は雪の上に膝を着くと、赤くなった小さな手を合わせて震えながら祈った。
「お星様」
少年の大きな黒い目に光るものが点じて揺れた。
「どうか、母ちゃんに会わせて下さい」
瞬き一つしない両目から、涙が溢れて零れ落ちた。
「ご馳走も何もいらないから、ずっとボロを着たチビのままでもかまわないから、今すぐ、おれを母ちゃんに会わせて下さい!」
星は、光り輝きながら、空と地上のあわいに紛れて消えた。