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この次、流れ星を見つけたら
「母ちゃん」
裏通りに出ると急に辺りは静かで真っ暗になった。
「泣いてるの?」
「ううん」
黒い影になった母親は鼻に手を当てて首を横に振る。
「何でもないの」
鼻を啜り上げる音が辺りに響いた。
やっぱり、母ちゃん、泣いてるんだ。
鴉児は濡れた右足が次第にかじかむのを覚えながら、左足で道端の石を蹴った。
蹴った小石は、カツカツと乾いた音を立てながら路地の遠く、どこか確かめられない場所に幽かな音を立ててぶつかった。
悪い奴らが、母ちゃんを泣かせた。
少年は歯を食いしばって夜空を探る。
この次、流れ星を見たら、早く大きくなって悪い奴らを倒せる様にお願いしよう。
おれはもう七つなのに、いつも三つか四つと間違えられる。
だから、お星様にお願いして、大人の洋人くらいの体にしてもらうんだ。
しかし、見上げる空は雲が立ち込めてきたらしく、星一つ見出せなかった。
「今夜は雪になりそうね」
母親がぽつりと独り言の様に言った。