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魔道具、魔導書の山(1)

 取りあえず、住むところは決まった。

 しかし、生活するにはここを片付けなければならない。まずは寝る場所を確保せねば……

「ガルディさん、このガラクタを外に運び出して」

「お前、何か勘違いしてねえか? 俺は用心棒だと言ってるだろ。お前の使用人じゃねえ」

「そうですか。じゃあ、もういいです。ガルディさんお世話になりました。お引き取り頂いて結構です」

「ああ、そうか……よくわかった。短い付き合いだったな。じゃあな坊主」と言いながらもなぜかそこらでぶらぶらしているガルディ。木の実をつまんだり、虫を突いたり、意味なく穴を掘ったり……

「ガルディさん、そんなところに穴を掘ったら人が落っこちます。ちゃんと埋めといてくださいね」

「これは俺の趣味だ、誰にも文句言わせねえ」

——困ったもんだ——

 エルンは取りあえず納屋の掃除から始めることにした。

 まずは一部屋、ガラクタといわれる物を外に運び出す。それだけでも半日仕事だ。

 スペースができたところでゴミ、埃を追い出す。

 ガラクタを陽の当たるところへ持ち出し、あらためて眺める。

 古民具、魔道具、魔導書、用途不明な道具、etc……

——よくもこれだけ集めたものだ。どうする気だったんだろう。僕のため? まさか…… ん? 木箱。神様が探していた柩かな?——

 手に取って見てみると、どうやらそれは違うらしい。開けてみると小瓶が数本詰められていた。ポーションのようだ。

——こんなものもあるんだ。後で調べてみよう——

 本棚から魔導書を手に取る。見たこともない言語で書かれているのだが、その内容が手に取るように理解できる。しかし、この世界へ来て言葉が通じることを考えるとそれもごく自然なことなのかもしれないとエルンは思った。

 しばらく読み入る。

——へー 獣族を思いのままに操る魔法か……こんな魔法もあるんだ。面白いな。あとで試してみよっと——

「おい、なに呑気に本なんか読んでいやがる。そんなものおもしろいのか?」

 ガルディが呆れながら見ていた。


 一休みすると井戸水の使用をゼルマ婆さんに申し出てバケツと雑巾を借りる。

 雑巾がけの合間に外へ目をやると、ガルディが運び出されたガラクタを手に取って興味深げに見ている。

——暇なら手伝ってくれればいいのに——

 その視線に気が付いたガルディが手招きしている。

「何ですか、ガルディさん」

「ここにあるガラクタ、売れば結構な値になるものばかりだ。珍しい魔導書もあるようだ。まずはこれを売って金に換えるといい」

「そうですか? ……でも、この辺りの魔導書は偽物ですよ」

「なぜわかる?」

「わかりませんか?」

「わからん」

「僕にもなぜわかるのかわかりません」

「変な奴だ。……お前には、ひょっとすると鑑定スキルなるものがあるかもしれん」

「鑑定スキルですか? はあ、そういうものがあるんですか」

「もっとしっかり鑑定してみろ」

「そうですね。……では、これを」とエルンは近くにあった古びたランタンを手に取った。

 かなり年季の入った埃だらけのランタンだ。

 エルンはそれ両手で抱えるように持つと、じっとそれを見た。

——ああ、何かが見えてくる——

「約一五〇年前の、当時名工と謳われたランドモール兄弟の工房で作られたA級のランタンで……完全品であれば市場価格十万デリラから十五万デリラで取引される。……魔力が封入されていれば暗くなると勝手に明かりがついたり、人が寝静まると勝手に消えたりする。完全魔道具で説明書、箱付きであればその五倍強で取引される。……だけど」

「だけど……どうした」

「破損があり、既に魔力はほとんど残留しておらず、現段階では三千デリラ程度……」

「それだけわかれば大したもんだ。やはり、お前には鑑定スキルがあるぞ」

「このスキルをどう利用したらいいですか」

「さあな、自分で考えろ」

 エルンには鑑定スキルなるものが備わっているとのこと。ガルディがエルンを鑑定した結果だ。

 その物に触れるとその物の価値、歴史、由来などがわかる能力だ。言語に関する能力もあるらしい。

 あの禿げた爺いさんが与えてくれた能力なのだろうか。

「修理はできるのか?」

「修理ですか? 手先は器用なほうですから道具さえあればできないことはないと思いますが」

「そんな面倒くせえことやってられねえだろ。魔法で直すんだよ」

「修理魔法なんて……どうやってやるんですか?」

「修理箇所を見つけたら念じるんだ。たぶん」

「はあ」と不審と不安を浮かべたままランタンに向かって念じてみた。

 すると曲がっていた反射板の形が整い、錆が消え、割れていたガラスが修復された。

「できるじゃねえか。修理魔法も使えるじゃねえか」

 ガルディがニヤリと不敵な笑みを零した。なにか企んだようだ。

——きっと僕を金蔓として利用しようと考えてるんだ——

「こんなことができるとは。僕もびっくりです」

「決まりだ。古道具屋だな」

「古道具屋といっても、この程度じゃ、すべて売っても大した金額にはなりませんよ。これから長く生活していくには程遠いです」

「だったら買い取ればいいじゃねえか。ポンコツでも廃品でも買い取って直して売ればいいじゃねえか」

「買い取りって……」

——そうだ、リサイクルショップだ——

 古い物、壊れた物を買い取り、それを修理して利益を上乗せして売る。

 霧の中、不安だらけで歩いてきて、突然に希望の光が見えた気がした。


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