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アパートを出る

 いずれこのアパートを追い出されることはエルンはわかっている。その前に住むところを見つけなければと思った。

 そして、仕事も……

「部屋を探すにはどこへ行けばいいの?」

「そんなことも知らねえのか。ガキめ。不動産屋だ」

——なんだ、前の世界といっしょなんだ——

 エルンはガルディとともに向かうことにした。

 途中、「ところでお前、どこから来たんだ」とガルディ。

 興味なさそうだったのでガルディにはまだ自身の素性を話していなかった。

 とりあえずかい摘んで話す。

「よくわからないんですが、どうやら転生してきたみたいなんです」

「転生者か。話には聞いたことがあるが、本物を見たのは初めてだ」とガルディはエルンをまじまじと見た。「そのお前が生きていた日本というのはどこにある?」

「どこって、……どう説明したらいいかわからないんですが、アジアという地域の端っこです」

「アジアってのがわからん……」

「海を越えるんです。たぶん」

「海を越えるって、落っこちちゃうだろ」

——えーっそこから? 地球が丸いって知らないのかな? ここも一応は地球だと思うけど……——

 いくら説明してもわかってもらえそうにないので、場所については適当に打ち切った。

 そこは、この世界から見ると異世界で、数種類の肌の色の違う種族がいて、大小数百という国に分かれて八十億以上の人が暮らしている。

 仲の良い国もあれば隣国で戦争をやっている国があるなど、取りあえず今ある知識で説明してみた。

 そのあたりについてガルディは興味深く聞いていた。

「結局、こことたいして変わらんってことだな」


 しばらく歩くと店先にべたべたと紙が貼られた店があった。

——ああ、やっぱり同じだ——

 エルンは一人店に入る。

 ガルディは興味ないようで外で座り込んで待つことになった。

 三十分ほどでエルンは店を出た。

「どうした。もう決まったか」

「ダメでした。どの物件も家賃が高すぎて借りられそうにありません。しかも仕事も決まってないガキに貸してくれる部屋はないそうです」

「まあ、当然だろうな。そういう奴は安宿で我慢するか、野宿だな」

「ただ、田舎の方に行けば安く貸してくれる部屋があるかもしれないと地図を書いてくれました。その村の村長さんに紹介状を書いてもらいました。村長さんと知り合いのようです」

「村はどこだ?」

「近いところではシュバイゲンとかいう村です。そこなら子供でも農業の手伝いとか家畜の世話の仕事もありそうだとか」

「結構遠いぞ。二、三度立ち寄ったことがある。村人二百人ほどの小さな村だ」

「そんなに遠いんですか?」

「距離にして二十キロ。お前の足なら歩いて四時間だな。行くか」

「行くしかないです。ここにいても住むところもなければ仕事もないですし。これじゃ、一カ月もしないうちに飢え死にしちゃいます」

「そうだな、それじゃあ、気を付けてな」

「なに言ってるんですかガルディさん。用心棒でしょ」

「街の中だけだ。そんなところまで付き合うなんて言ってない」

「決まったことは死んでも果たしてもらうといったのはガルディさんですよ。ガルディさんも約束を果たしてください」

 ガルディは溜息をもらしながらも後をついてくる。

——言ってみるもんだ。意外と律儀なんだ——


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