強盗に遭う?
三人で野宿をして一夜を過ごし、翌日は早朝、日の出とともに出発。
半日も歩いたころ、道の脇に一本杉が聳えていた。その横に立ちはだかる者。大男だ。剣を手にしている。
ガルディが緊張を漲らせた。ガルディより二回りも大きな体をしている。
「あれはブルートクリゲア族の戦士だ。血の戦士と呼ばれる勇猛な戦士の一族だ。トラブルになれば厄介だ」
視線を合わせないようにしながら近づくと、行く手を遮るように立ちはだかった。
「な、なんですか? 何か用ですか?」
エルンは見上げながら聞いた。
「とととと止まれ」
「止まってますけど」
「お、お、お前ら、かかか金目の物を置いていけ。おいおい置いていけば、いのいの命まではととと取らん……やっと言えた」
男は剣を抜いて威嚇した。剣先が左右に激しく揺れている。
「行こう。こいつは無視すればいい」
ガルディが歩を進めた。
エルンとシモンは言われたように見て見ぬ振りをして通り過ぎようとした。
「おおおい、きき聞こえねえのか。かねかね金目の物を……」
「お前、足も震えているぞ。ブルートクリゲア族の男は勇猛果敢と聞いたが、地に落ちたな。恥を知れ」
「…………」
男は崩れるように膝を落とした。
見た目は怖そうだが、気が小さいことが窺える。
「やっぱり無理か……」 男は拳を地面へと叩き付けた。「俺ってダメなんだ、何をやってもダメなんだ……」
大男はその場で泣き始めた。
「今度は泣き落としだ。行こう、相手にしないほうがいい。逆に厄介だ」
ガルディがエルンの襟首を引く。
「でも、いいのかな」
エルンが心配そうに振り返る。
「商売もそうなんだけどさ、手を代え品を代えやってみるもんだ。その手だ。行こ行こ」とシモンが言う。
三人は無視することに決めた。
しかし、大男がついてくる。
「どうする?」
ガルディが聞いた。
「無視するのが一番だ」
シモンが言う。
しかし、エルンは立ち止まると踵を返し、大男に駆け寄った。
何をする気かとガルディとシモンが見ていると、懐から革袋を出して何かを渡した。
「まさか、金をやっているのか?」とガルディ。
「嘘だろ……」とシモン。
エルンが戻ってくると「少しだけど、お金を渡しました」
「いくらだ?」
「十万デリラ」
「バカかお前は。そんなに金が要らねえんなら俺にくれ」
「でもあの人、お金に困ってるようでしたから」
「俺だって困ってる。だからお前みたいなガキについてきてるんだ」
しばらくして振り返ると大男の姿は消えていた。




