不穏の兆候
討伐パーティーが森へと入って四日ほど経つと、シュバイゲンの村がにわかに騒がしくなった。
予定では討伐三日のはずだったが、一人も帰還せず、何の連絡もない。何かあったに違いないとの噂が立ち始めた。
しかし、長引いているとも考えられるため、もう少し様子を見ようという意見があり、ゼファイル村長の指示により捜索隊を編成しつつも待つことにした。
四日目の早朝、北の方角から二人が生還した。
魔法使いジータと剣士一人だった。
二人とも瀕死の重傷を負いながらも生還したのだった。
「他の三人の剣士様はどうされました」
「大半のグロイエル、グリフスは仕留めたが、こちらの犠牲も大きい。三人は討ち死にした。グロイエルに叩きのめされ、グリフスに貪られた。遺体も回収できぬことは無念極まりない。……射ち漏らした奴らは仲間を集めて再び周辺に現れるだろう」
生き残りの剣士が息も絶え絶えに言った。
「奴らは今までに見た魔物ではない。凶暴で、しかも死を顧みない。魔物とて死を恐れるはずだが、あれらにはまったくそれを感じなかった。それどころか痛みさえ感じていないのではないかと思われる。ひょっとすると何かに洗脳されているか、操られている可能性がある。それを弁えて今後の対応策を考えねば……」
左腕を失ったジータは言い終えるとその場へと倒れこんだ。
そのことはすぐにゼファイル村長へと伝えられ、すぐに村人が招集され、伝えられた。
ある村人が疑問を呈した。
「なぜ今、この村の周辺にグロイエル、グリフスが出没するようになったんじゃろう? 以前はこんなことはなかった。しかも、操られたグロイエル、グリフスとは……奴らの目的はなんじゃろう? それを絶たなければ埒が明かん」
薄々、その疑問を持っていた者は多かったに違いない。
しかし、その後、街からの情報では、グロイエルやグリフスが出没しているのはこの村周辺だけではないことがわかった。
国のいたるところで出没の報告がなされ、しかも凶暴化しているとのこと。




