世代交代
「そろってるな」
「稲荷…」
現れたのは現防衛軍最強の男、稲荷連だった。
「よぉクソガキ。防衛軍に入る気になったか?」
「少なくともあんたがいる間は入らないだろうな」
「星読から条件は聞いたのか?」
「条件?」
「なんだ。聞いてねぇのか」
稲荷の目線は俺の後ろに立つ星読のほうを向いた。
「条件提示しねぇでこのクソガキを勧誘できるわけがねぇだろ」
「相変わらず口が悪いわね…条件については話す前に黒神が出ていこうとしただけよ」
そんな軽口をかわしたのち稲荷は俺の前に立つ。
「条件は、俺が防衛軍を抜けることだ」
俺はすぐに後悔に襲われた。
「どういうことだ…あんたが防衛軍を抜けるって」
「理由は二つ…一つは娘ができたことだ」
「ああ…なるほど…?」
「もう一つは悪魔信仰教団の上級司教との戦いの後遺症が原因でもある。」
「後遺症?」
「ああ。永久的な神経麻痺が俺に残された後遺症の正体だ」
「な…!?」
「だから俺は本来オーラがなければ歩くことさえ不可能だ」
淡々と述べられるその事実を俺はうまく呑み込めなかった。
「以上の理由より俺は防衛軍最強の座を降りる…後継者はクソガキ…お前しかいない」
その言葉に俺はとっさに星読を見るが彼女は首を振る。
「防衛軍内部構成はここに書いてある。この内部状況を頭に叩き込んで俺が抜けた瞬間から業務にあたれ」
「いや…おれは」
「お前が提示した条件は【俺が防衛軍から抜けること】だろ?条件を達成したんだ。無理やりにでも入ってもらうぞ」
完全に逃げ道をつぶされたのを感じ俺はため息をつく。
「はぁ…わかった。やるよやればいいんだろ」
「話の分かるやつでよかった。んじゃこれが内部構成な?これ叩き込んでおけ」
机の上に出されたのは大量の書類の数々だった。