正義
「いるか~?星読」
ノックをせず俺はずかずかとメモに書かれた部屋に入る。
この建物はおそらく防衛軍所有の拠点の一部なんだろうな。
「こんなとこに呼び出すなんて…稲荷は何を考えてんだか」
「まぁいいじゃないですか」
「一般人の俺が防衛軍内序列2位の人間と会うってのはなぁ…」
「私直々に勧誘する一般人なんてあなたが初めてよ」
「まぁ…だろうな」
「あと、あなたのことを一般人と評するのもどうかと思うのだけれど」
「俺はどこにも所属していない」
「ええ…【聖教会】【革命派】【異能者独立組織】…どれにもあなたは所属してないものね」
「でもお前が所属している【防衛軍】もほか3大組織よりも上の立場だろう?」
「ええまぁ…≪ルクス≫に関しては教皇が防衛軍第4部隊隊長ですもの…」
「そんな戦力が充実している防衛軍に今更俺を勧誘する必要はないだろう?」
俺と星読は部屋に用意されていた椅子に座りながら話し続ける。
「【聖教会】第5~第3階位司教まで以前の悪魔信仰教団との全面戦争で全滅したわ」
「はぁ…悪魔信仰教団…ソロモン72柱の名を関する司教と7つの大罪の名前を関する大司教で構成された、神を信仰する聖教会と敵対する、悪魔を信仰する教団…だったか?」
「ええ。やってることはテロそのものだけれどね」
「過去のテロは確か…防衛軍襲撃テロがあったな」
「前任の第1~第5部隊隊長が全員一人の大司教に殺され、全副隊長が上級司教3名に殺された事件ね。対して私たちの戦果は下級司教全滅、中級司教半壊…割に合わないわ」
「上級司教と大司教にはダメージを与えられず全滅…そう考えるとバランスなんてあったもんじゃねぇな…あれから防衛軍は復帰したが…闇側の戦力に対抗できない…故に俺の勧誘ってことか?」
「はぁ…そこまで理解したうえで断ってるのでしょう?あなたのその能力が防衛軍には必要よ」
俺はそんな言葉を言われる。
「俺は…他人の正義を否定するのは飽きた」
俺ははぁっとため息をつく。
「あなたの能力が必要なのよ」
「いやだね。俺の力は誰かのために使う物じゃねぇ」
俺は会話を打ち切って部屋を出ようとする。
だが俺が扉を開けるより早く扉は空いた。
そこに立っていたのは現代一部隊隊長の稲荷だった。