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プロローグ
エステシア・ラ・ドールカシャ。
ドールカシャ家に生まれた第一子。男装をして生かされてきた女だった。それが私。家柄も良く、幸い不自由なところは男装以外ない。
七つになる日、私は侍女を引き連れて部屋を出ていた。父と母の出迎えに向かう最中だったのである。
急ぎ玄関ホールをまで辿り着き、馬車の音を聞く。父と母に会えるという喜びが先立ち、私は胸を弾ませた。そして階段の前までやってきて足を出そうとした瞬間、いつの間にか気が付けば地面に転がっていた。
背中の痛みと頭、足の尋常ならざる鋭い痛み。痛いと泣くことも出来なかった。目の音を聞き付けた侍女たちが集まってくる。
周りが騒然とする中、私は呆然と考えていた。私を落としたのは侍女のアンナ。嘘だと思った。アンナは私が心から信頼する侍女だった。彼女も私と同じように信頼してくれていると勝手に思い込んでいた。
_アンナ…どうして
視界が歪んだ。頭を強く打った所為だろう。目頭が熱くなっていくのを感じながら、私は意識を手放した。