恋を応援してあわよくば破滅を回避したい!〜私はどうやら鈍い女だったらしい〜
よく手入れされたサッカーコート何個必要なんだと思うほどの規模を誇る学園全体を覆う生垣。繊細な装飾が施された門を潜るとこれまたとてつもなく広い庭園とも呼べる程に作り込まれた空間は校舎までの通路が伸びる。
キョロキョロと田舎から都会へやってきた者のように周囲を物珍しさから見渡す。公爵家の出身で学園の広さにはそれほど驚きは無いけれど周囲の人の多さにはちょっとドキドキしてる。というよりも「破滅回避☆大 作 戦!」への成功を祈る気持ちと作戦に使う物品やらなんやらがバレて家から着いてきた侍女に没収されないかヒヤヒヤが止まらない。
最初に着いてきた侍女を下げさせギリギリスカートに収まるサイズのボストンバッグをちゃんと誰も居なくなった事を確認してから顕にする。先にも言ったが公爵家の令嬢がスカートをたくし上げるとか恥じらいの無さも良いとこなので。
カチャリとバックの錠が外れた音を確認して蓋を開ける。そこには水晶玉とそれを乗せるクッション、正体バレを防ぐためのフェイスベールとそれっぽい服。あと雰囲気アップさせそうな小道具に運気上がりそうなアクセサリーの小物入れが入っている。
気合いを入れて前世でハンドメイド作家をやっていた血が騒いでこっそり夜更かし→徹夜を繰り返しながらこさえた品々ら。学園の2つ目の門前で馬車を降りて何食わぬ顔でこっちまで歩いてきたが家出た瞬間の日差しが眼に鈍い衝撃があってしんどかったし馬車の中での記憶が無い。公爵家周辺の街中くらいまでは記憶があるけど…だらしない顔、晒してないと良いな。
一通り作戦用の荷物たち以外の服やらなんやらをし舞い込んだら片方の耳に付けたイヤリングを指先でトンと、揺らした。
「カリーナ、マロン。こちらへ来てくれるかしら?」
トントン、ガチャ
ほぼ意味のなさないように形だけのノックをしてドアを開けて2人は中へと入ってきた。
「リズ様おはようございます!」
「いいお天気ですね、リズリアナ様」
この2人は今回の作戦成功のために必要な人材で協力者&使用人で、本人達には伝えていないが最終的に私単独で成就させなければならないこのゲームの主人公だ。2人は伯爵家の私生児で物語が始まる少し前に引き取られて…と云うのがプロローグ。こちらに産まれ落ちてから令嬢やらせてもらっている身からすると「せめて貴族の礼儀作法くらいか教えてからでしょ」と、思ってしまう。
まあ?そんな事になる前にこっそりと私が専属の侍女として迎え入れたから大変な思いとかさせないけどね!。
ゲームの名前は"不思議と恋のおまじない"なんか少女漫画みたいな名前してるなって興味本意で買ったのだが意外と面白かった。
まずは主人公が2人いるのだが、攻略キャラが所属している科によって分かれているため2人が出会うことはまず無い。
攻略キャラをオトす片手間に特技で不思議なアイテムを精製して悩める少女達の願いを叶えるといったものだ。ちなみに予算削減のためか私はどちらにも出てくるのだが、それを逆手に取って今回の作戦を編み出したのだ。
"恋の占い師"だ。
キューピットじゃなくて、なぜハンターって?。私は悪役令嬢と呼ばれてるのにそれにはなれないかなぁ…って。ゲームの流れ的にも逆境に抗うというかむしろ燃え上がる的なノリで結ばれたけどさ。それは…ほら、私を犠牲にした結果で成果な訳で、死にたくないのだ。
小さい時からちゃんと破滅ENDにならないように色々頑張ってきたのだ。けどどうも空回っているみたいで、婚約者で王子のエインヒルと仲も微妙。嫌われてはいない…と思う。
入学式で目があった時に笑って返したらそっぽ向かれちゃったけど。
と、いう理由から2人には色々噂を流布してもらって恋の治安を護りたいと思う。
それに私恋バナを聞くの好きなんだよね。
専属の侍女とはいったけど破滅回避の作戦として2人にも生徒として入学出来るようにお父様にお願いをして入れさせてもらった。カトリーナは魔法の特待生だからそっちへ、マロンは私と同じ特進科。三人力合わせて造ったイヤリング型の通信機を通して色々指示しながら行動ができるから根回しやらなんやらは順調に進む。やっぱり主人公だからかおんなじクラスのマロンの周りには人だかりが出来ている。
…私は独りで本を読んでいるけど。
館の使用許可がまだ降りてないうちはフラッと何処かのスペースに机やらなんやらを置いてゲリラ占い師を行う。正直ちゃんとやれてるか心配だったけど評判は上々、安心した。
そういえば相談で人物の特徴が一致しする謎の関係荒らしの話を聞く。プロポーションとツラが良いらしく、それをわかっているからか惜しげも無く使ってハーレムを築いているのだと。しかしどうやら噂のビッチちゃんは最近になって病状が改善したとかで学校に登校しだした事らしい。それにしても良く通わせているなぁ…と、悪役令嬢として頭を悩ませているのだった。
入学から2ヶ月が経ち、作戦実行の最終段階まで来た。場所は北西にある女子生徒がよくお茶会を開いているガーデンスペースの奥にあるガゼボを通り抜けた先にある古びた小屋の中にある。そこに決めたもの上記の、女子生徒が良く通ると言う理由。
そこの使用許可はまあ、ほら…パワープレイってやつ。
学校のシンボルでもある鐘の音が鳴り響き、今日という日の一日が終わる。すぐに寮へ帰るものもいれば学年が違ったり、クラスが違ったりと様々な理由で逢えなかった友人か婚約者と中庭で談笑しているだろう声が聴こえる。
「リズリアナ様、最初の恋する乙女恋する乙女が!」
カランコロン
物思いに吹け僅かな時間、ドアが開くと同時に来客を告げるベルの音が鳴り響く。それと同時にぱっと周囲を妖しい色の光源がポッ…と灯り、まるで惹かれるよう無意識に水晶玉の置かれた机の椅子に座る。
「ごきげんよう。ここに誘われたのならきっと、誰にも打ち明けられない素敵なお話があるのね。大丈夫よ、ここでの事は誰も知らないわ。…だからワタシに話してみて?」
顔が見られないように目元を綺麗な刺繍の施されたレースで隠し、喋りながらいかにも占い師っぽい感じに水晶玉の横で犬を撫でる時の手つきで左右に動かす。
はっきりというと前世は普通に会社員の片手間でハンドメイド作家をやっていたから占いなんて全く解らない。せいぜいタロットカードをモチーフにアクセサリーを作ったくらいだ。
そうして悩みを打ち明けるように促すと目の前の女子生徒はポツリと悩み事を打ち明けた。
「私には婚約者が居るのです」
彼女の名前はメルティ・バーハイト。
バーハイト伯爵家の次女で国で宰相の任に付いている候爵家のザムオブに嫁ぐ事になっている。確か仲は良好で学園でも同じクラスの母親同士が友人関係にあったとかで幼馴染も同然で過ごしてきたという。
しかしどうにも最近、彼の様子がよそよそしい。話しかけてもすぐに終わらせられ、一緒に帰ろうとしても用事があるからと友人の元へ行ってしまう。
学園に入ってからの突然の変わり様に戸惑いを隠すことができない。ずっと一緒にこだったからこそ気づかなかったが、初めて隣に居ないという心細さやらを知って、自分が彼の事をちゃんと一人の異性として好きになっていた事を気づいたのだ。
「彼がもし、私の事が嫌いになったと思うと胸が苦しくて……」
ポタポタと涙を零しながら話を続ける。自分でも気づかぬ間に感情が変化していたのだろう。貞操に関する教育は義務でも情操は任意なのだ。恋愛小説も読めぬ貴族の身分で、見るからに親に反抗せず言われた通りに生きてきたのだろう。
…嫌味ではなく、素直で真面目な子っていう意味で。
「…なるほど。それは辛かったでしょう」
打ち明けられぬ悩みなんてこの世界では当たり前の事。何がどう作用して自らの首を絞めるのか解らないのだから。
んーしかし、いかがなものか。
ゲームの方ではあらかじめ何をすればいいのか事前にわかっていたからなぁ〜。
……あ、そうだ
「雲ひとつ無いオレンジの空でこのブレスレットをつけて歩いて下さい」
はたと思いつき、目印になりそうな品目印になりそうな品を彼女に渡す。占い師っぽい言い回しになっているからさておき。
上手くいくかはわからないが、ユーディスティム家の眼光なるものを使えばうまくいくのでは…?と。
次の日の同じ時間、私が渡したローズクォーツを沢山に施したブレスレットを左腕につけて独りで歩いている。少し前方にはお相手のザムオブ家の子息が無言で去ろうとしていた。
「ねぇ、ルーク。…一緒に、帰りましょう?」
不安そうな顔をして声をかけるメルティ。ルークが振り返り彼女の姿をみると少し目を見開いて、ツンとした表情で何事もなかったかのように歩き去ろうとしている。
てか彼の名前聞き忘れてたけどルークって言うのか。…ん?ザムオブって家名聞いてちょっと疑問が浮かんだけどやっぱり攻略キャラのクールじゃん!なんで思い出さなかったんだよ!!。
物陰からサングラスとちょっと葉っぱのついた枝を両手に持ち内心動揺しながら進捗を観ていた。が、どうにももどかしい。貴族だから感情を表に晒すのは悪いことだから仕方ないけれど。
だけど2人が通じ合っているのは一目瞭然なのだ。あのツンとした顔も照れ隠しな事は私が居る位置からはちゃんと視えて…いや違う。わかっている。
今にも彼女の目の前から去ろうととしているルークを見て思考を巡らせる。私がすべき事はなんなのか。
木の陰で悩んでいると一人の女生徒が飛び出した。
「ちょっと!ルーク様が困っているわ!!」
ブラウンカラーのふわふわハーフアップ頭が両手を腰に当ててプンプン怒っている。いや、誰だコイツ……。
色々事を知ってたり察していた周囲の生徒達は彼女の行動にザワついている。
「ルーク様〜。貴方のためにわたし、頑張ったんです!!だから、今日こそは一緒に帰りましょう♪」
キャピキャピしながら目の前に婚約者のいるのにも関わらず、許可も無し彼の腕にしがみつく。「なんと非常識な…」と何処かで悲鳴の言葉が聞こえてたりしたが、彼女のには聞こえないし、効かないのだろう。
「おい、俺はお前なんかに頑張ってもらう必要も無い。それに何度も言うが勝手に絡みつくな。ウザい」
嫌悪感まる出しにルークは言う。メルティは青ざめて今にも倒れそうでさっきまで「((さっさと付き合っちゃえよ!!))」な雰囲気だったのが一気に修羅場と化してきた。キュルキュル目で相手に何言われているのか分からなさそうな顔をしている全く記憶サーバーに登録されていない正体不明の女。明らかに「自分は愛されて当然!」と言わんばかりなポーズやら表情をしているが狙っているルーク本人も周囲の人間の神経を逆撫でしかできていない。
これは私が出るしか無いか…。と思い、立ち上がろうとした時、ビリビリと空気を震わせるような声が響いた。
「いい加減にしろ!!」
絡みついていた彼女の腕を引き離しドン!と突き飛ばすと、射殺さんとばかりの目つきで見ている。突然の事で自分の身に何が起きたのか理解出来ていない様子。
「る、ルークさm…」
「俺には大切な婚約者がいると言ったよな?。メルティに何されるか分からないし、合わせる訳にいかないと仕方なく避けざるを得なかったのに…」
彼女が話そうとしていたのを遮り続けてルークが言う。誰がどう見ても明らかに怒りに染まっている。ようやく状況を理解したのか、それとも相手の雰囲気に気圧されたか今にも泣き出しそうな顔をしている。
その時、ルークの後ろにいたメルティがフラリと倒れそうになる。怒っている彼の姿なんて見たことが無かったのだろう。女の花園には慣れていたとしてもこうにもストレートな覇気など相手の地雷上でタップダンスに失敗でもしなきゃ見られるものでも無い。
その証拠に周囲に居た人たちも呆気にとられている。
「メルティ…!。まあ、いい…お前の家にはこちらも懇意にしていたからの抗議入れるか悩んでいた。だがこうなってしまったが以上そう情けをかける訳にもいない。正式に抗議を入れる」
「そんな…どうして……」
ポロポロと涙を溢れさせて悲劇のヒロインと言わんばかりの構図で手を伸ばす。無自覚で演っているのか、それとも意としてしているのか……。どちらにせよヤバいヤツって事には変わりは無いが。
そんな事はさておき、彼女には目もくれずルークは気絶してしまったメルティを横抱きするとそのまま馬車に乗って帰ってしまった。呆然とする周囲と取り残されたヤバい女。藪蛇では無いにしろ誰も彼女を心配する者は居ないだろう。
……もしかしてこの場に居合わせた公爵家の令嬢として私が声かけしなきゃいけないやつか?。
そう思ってそぉ〜と植木の陰から移動し、歩道の真ん中から声を出す。
「いったい、このような道の間で何をしてらっしゃるの?」
威厳というか凄みがあるのか私が歩くと波が割れるように人が退く。口元を扇子で隠し、本心では面倒事に勘弁してと思いながら凛とした佇まいで、名も知らぬ令嬢の元へ歩く。
「貴女の事h」
「アンタのせいね!リズリアナ!!」
キッとまるで敵を見つけたという勢いで私を睨んでくる。え?誰?。
「マークスの時もランベルもわたしの誘いを断ったのよ!!。そんな事が絶対にあるはずないのに…なら原因はアンタしかいないでしょ!この役立たずの悪役令嬢!!」
近くにあった小石に風魔法を乗せられ、弾丸の速度で飛んでくる。突然の罵倒と勢いで身体が動かず避けられない…!と思ったその時、
「……?。………えっ!」
「リズリアナ、大丈夫かい?」
私を護るように目の前にエインヒルが立っていたのだ。
「ただの子爵家の令嬢がボクの婚約者に危害を加えようだなんて」
指先が少し触れるとその場で留まっていた小石は自然にその場で力を無くし、手のひら落ちた。
「兵達、その反逆者を連れて行け」
「いや!なんで、どうしてエインヒルさまァ!!」
両腕を掴まれ引きずられながら連れて行かれる。抵抗をしているがやはり力の差があるのか無駄なあがきとなっているみたいだ。
「リズさまぁ〜!」
すごいスピードでカリーナとが走ってくる。
動きにくかったのか、最初は両手でスカートを握っていたが私の方へもうすぐとなるとカリーナは両手を広げてそのまま飛び込んできた。
「きゃ!もう、カリーナったら。私は大丈夫よ」
「リズリアナ様…怪我がなくて良かったです」
遅れてやって来たマロンは私の姿を見てホッとしているがみたいだ。カリーナがウリウリと頬ずりしながら泣いているのをみて「リズリアナ様の制服が汚れてしまうでしょう!」と引き剥がそうとしている。
されるがままになっていたが、また後方から足音が聞こえて目線だけでもと少しそちらの方へ向ける。
「殿下、またキャンティ令嬢が問題を起こしたと報告を受けたのだが…」
明らかに嫌そうな顔をしながら被害者の一人で王国騎士団団長の息子のランベルがエインヒルに話しかけた。
話を盗み聞いていたらやっぱり他にも問題を起こしていて、キャンティと云う名の彼女は学年問わず手当たり次第に自分より爵位の上の子息に声をかけまくっていたらしい。生徒会にも苦情の投書が山盛りに来ていて頭を悩ませていたとか。
また遅れてやって来た他の生徒会の人間がここであった出来事の事情聴取を周りで見ていた人達に聞いているらしい。
私はと言うと、念の為とエインヒルにお礼も言えないまま保健室に連れて行かれてしまった。
そしてエインヒルにお礼を言えないまま3ヶ月が経った。
あの後メルティさんが館に訪れて顛末を聞いた。
妙に頭が回るらしく、真正面から窘めた令嬢は大怪我を負って療養しているのだとか。証拠を揃えようにも少ないらしく調査は難航していると。その話を聞いてできるだけ接触しないように、メルティに加害が加えられないようにと思い至ったらしい。
「君のためと思って避けていたが、そのせいで傷つけていたんだな…ごめん」
泣きそうな顔をしてそう言われてしまったら怒るにも怒れないと。そして今までの反動か、人気の少ないらしく所でおもむろにキスをされたり「愛してる」と面と向かって囁かれたりと甘々な学園ライフが送れていると幸せそうに語っていた。
……あれ?もしかして私、盛大に惚気を聞かされてる??
その話を自体は随分前、事件の2日後に聞いたのだが、今では占い師の私としてではなく”リズリアナ”の友人として館に訪れている。その度に1kgの角砂糖の袋が量産されそうな程の話をされてしまうけど。
今日も話を聞いていたら「ルークに呼ばれたから」といそいそと荷物を纏め始めた。「次は屋敷でお茶会をしましょうね!」って笑顔で手を振りながらお別れをした。
次のお客様のためにカリーナとマロンにはお茶の片付けと準備で奥に引っ込んでしまった。
カランコロン
「あら……。え?」
最初は男物の制服が見えて珍しい。なんだか見覚えがありすぎる…けど暗いし、身バレ防止の黒のベールのせいで見えない。どうやら相談者は良く見慣れた慣れた手つきで椅子を引いて目の前の席に座った。
「ここは女性が利用することがほとんどだろうし、次の相談者に迷惑をかける訳にもいかないから手短に済ませるよ」
だから安心して?
と、ぼんやりと光るライトの中彼は薄く笑った見せた。
「ボクには婚約者がいてね、いつも何かに追われているように動いていた。手伝ってあげたいのに、話しかけたら怯えてどこかに去ってしまう。初めてあった時はそんな事なかったのにね」
懐かしむように話す姿に相手を愛おしいと心の底から想っているのだと印象を受けた。
けれどどうしてこんなに心が痛むのか。
「最近はどうやら周囲からの相談事に熱を入れているらしくてね、ここの事も先程出ていったメルティ嬢から教えてもらったんだ」
なんだか雲行きが怪しくなり始めた。
え、メルティから?でも……
「そこで悩みを聞いて欲しい。ひたすらボクを避け続けている何よりも大切な婚約者を捕まえるにはどうすればいいかな。」
困惑する私をよそに、目の周りまで覆っていたベールが彼の手によって取られてしまう。
「ねぇ……リリィ?」
捕まえたと言わんばかりにこちらを愛おしそうに微笑んだエインヒルだった。
「え……?!」
あれからというもの、エインヒルは私に想いが伝わったと確信したからなのか事あるごとに接触(物理)を図るようになった。
「ワタシ達に何かと愚痴混じり惚気るのはやめてください!リズリアナ様。砂糖を加えてないのに紅茶が甘く感じてしまいます!!」
マロンからはこう言われ、
「今回に関しては100%リズ様の落ち度ですからね〜。ワタシも、マロンもずーっとお仕えしていたけどまっっったくエインヒル殿下のわかり易ーい好意に気付かないから頭抱えてたんですよぉ」
そ・れ・に!相談に来ていた女子生徒は自分の悩みも話していたけど大半がリズ様とエインヒル殿下の恋模様を応援しに来ている人達ばっかりでしたからねー。
「全然気づかなかったわ……」
次々と自分だけが知らない事実が明かされてゆく。ずっと自分の身の事だけ考えて行動してきたからか、エインヒルから「ボクだけのお姫様」と手首口づけを落とされてしまい…
「あ、あわわ………」
しゃがみこんで悶えるしかない。
初心だとからかわれてしまっても仕方がない。手の甲なんかはでは挨拶感覚で社交界に出た時なんかにされるから慣れてるけど。
熱の…籠もっため、目で……見つめられて……
「っ〜〜〜!!!」
「またやってる〜。リズ様も恋の占い師やってる時は立派だけどいざ自分に降りかかるとポンコツになっちゃうんだ✩」
「ふふっ。将来安泰ですね」
今までのお詫びとしてお揃いのブレスレットを作ろうと、2人から提案されて作成途中。相手の事を想っていつも通りに作り進めているのだけどなかなか思う形に出来上がらない。
エメラルドを入れたささやかな気持ちを込めて。