第16話:バドミントンは楽しく真剣に
遂に始まった県予選。隼人と彩花が公式試合で遂に激突します。
そして2023年7月1日の土曜日。
名古屋のドルフィンズアリーナにおいて、全日本中学生バドミントン大会の県予選が、遂に始まった。
愛知県の尾張地区、名古屋地区、東三河地区、西三河地区の地区予選を勝ち上がった、シングルス32名とダブルス16組が、次々とドルフィンズアリーナに集結する。
平野中学校からは地区予選を勝ち抜いた隼人と彩花の2名が、尾張地区代表としてシングルス部門に出場する事になっている。
そして7月の土曜日の4日間を利用してトーナメントを行い、決勝まで勝ち上がったシングルス2名と、優勝したダブルス1組が愛知県代表として、8月の夏休みに行われる全国大会への切符を掴むのだ。
さらにこの県大会からは、同じ中学校の選手同士による対戦も解禁される事になる。
つまりは順当に勝ち進めば、隼人と彩花が敵同士としてぶつかり合う事になるのだ。
開会式が無事に済んだ後、トーナメントの組み合わせを決める為の、選手によるクジ引きが行われ、隼人による選手宣誓をもって試合開始。
「ゲームセット!!ウォンバイ、平野中学校3年・須藤隼人!!ツーゲーム!!21-3!!21-4!!」
「ゲームセット!!ウォンバイ、平野中学校3年・藤崎彩花!!ツーゲーム!!21-3!!21-2!!」
やはり隼人と彩花の強さは圧倒的であり、地区予選を勝ち上がった猛者たちさえも全く寄せ付けない圧勝劇だった。
この隼人と彩花を目当てに訪れた観客もかなり多いようで、この2人の試合になると歓声が一段と大きくなる。
それに観客だけではなく、全国各地から集まった強豪校のスカウトたちの姿も。
隼人と彩花は、それだけ日本中から注目されている存在なのだ。
そして大会は特に何のトラブルも無く順調に進み、2023年7月22日の県予選最終日。
遂に隼人と彩花が、公式戦でぶつかり合う事となったのである。
これまでは複数のコートを使用して数試合を同時進行していたのだが、今日の最終日は午前中にシングルス4試合、午後にダブルス4試合を…それぞれ準決勝2試合と3位決定戦、決勝戦を、1つのコートで1試合ずつ行う事になっている。
だが運命の神様とやらがこの世界に実在するのであれば、隼人と彩花に一体どれだけ残酷な試練を与えれば気が済むと言うのか。
「それでは只今より、全日本中学生バドミントン大会・県予選準決勝第1試合、平野中学校3年・須藤隼人選手 VS 平野中学校3年・藤崎彩花選手の試合を開始致します。」
この2人がぶつかり合うのが、よりにもよって準決勝とは。
これが決勝戦だったならば、2人共愛知県代表として全国大会に出場出来たというのに。
2人共全国レベルの実力の持ち主だというのに、どちらか片方しか全国大会に出場出来ないのだ。それを残念がっている観客も相当多いようだった。
「さあ、いよいよシングルス部門の準決勝が開始されます。まず第1試合は今大会一番の注目カード。『神童』の異名を持つ須藤隼人選手と、シュバルツハーケンの元エース・藤崎六花さんの娘さんであるサラブレッド・藤崎彩花選手との試合です。」
準決勝からはテレビ局のアナウンサーによる実況と六花による解説が、このドルフィンズアリーナに流れる事になっている。
コートのすぐ目の前にある解説席には、ネクタイを首元に締めてリクルートスーツを身に纏った六花が、両耳にマイク付きのヘッドホンを被せて座っている。
そして六花の隣に座るのは、地元テレビ局のベテランの男性アナウンサーだ。
「実況は私、CCCテレビの佐々木恵一が。解説は藤崎六花さんにお願い致します。藤崎六花さん。今日の残り8試合の解説、どうぞよろしくお願い致します。」
「はい。よろしくお願いします。」
「さて藤崎六花さん。この両選手はスイスにいた頃からの幼馴染、しかも同じ中学に通っていますが、それ故に互いに手の内を知り尽くしている者同士の試合となります。どう分析されますか?」
「一般的にこういう試合の場合、互いにやりにくさを感じて泥沼の試合になるケースが多いのですが、この2人の場合はそれに当てはまらないと私は考えます。」
「と、いいますと?」
とても慈愛に満ちた笑顔で、六花は隼人と彩花…自分にとっての大切な2人の姿を見つめていたのだった。
「何しろ彩花は、いつも私に言っていますからね。ハヤト君と打つのは本当に楽しいって。」
「成程。それは須藤選手も同じ事だと?」
「そうですね。だからこの2人にとって、互いにやりにくさという物は感じていないのではないでしょうか。」
六花の優しい声がドルフィンズアリーナに響き渡る最中、コート上で審判に促されて握手をする隼人と彩花。
今の2人の頭の中からは、どちらか片方しか全国大会に行けないという事は、もうすっかり抜け落ちてしまっているようだった。
あるのはただ、この県予選準決勝という最高の舞台を、2人で存分に楽しく、そして真剣にプレーしようという気持ちだけだ。
「それじゃあハヤト君。私たちの準決勝…存分に楽しもっか。」
「ああ。六花さんがいつも言ってるように、バドミントンは楽しく真剣に…だな。」
「ねえねえ隼人君。この試合で私が勝ったら、私にゼニーズの新作のスペシャルメロンパフェを奢ってくれる?」
「ああ、あのネットで話題になってた奴か。じゃあ僕が勝ったらハンバーグカレーな。」
「いいよ~。」
こつん、と互いに軽く右拳を合わせ、笑顔で定位置へと向かう隼人と彩花。
そして審判からシャトルを受け取った隼人が、左打ちの変則モーションの構えを取り、穏やかな笑顔で真っすぐに彩花を見据えたのだった。
「ファーストゲーム、ラブオール!!平野中学校3年・須藤隼人、ツーサーブ!!」
「さあ、油断せずに行こう。」
観客からの凄まじい大声援に後押しされながら、遂に注目の一戦が開始された。
試合は得点こそ両者互角ながらも、彩花が楓からラーニングしたクレセントドライブを前後左右に散らし、そこにロブやドロップも織り交ぜ隼人を巧みに翻弄する。
そこに六花直伝のシャドウブリンガーも加え、隼人を何度も力で捻じ伏せるものの、それでも隼人は試合の主導権だけは譲らなかった。
クレセントドライブによって何度もコート上を走らされ、シャドウブリンガーでラケットを何度も吹っ飛ばされようとも、リードだけは一度も譲らずに、追いすがる彩花を何度も何度も突き放す。
そして。
「ゲーム、平野中学校3年・須藤隼人!!21-17!!チェンジコート!!」
「よしっ!!」
ファーストゲームをもぎ取り、ガッツポーズを見せる隼人。
この2人の試合のあまりのレベルの高さに観客たちは大いに盛り上がり、全国から集まった強豪校のスカウトたちも、とても真剣な表情でビデオカメラで試合を録画している。
そんな2人の素晴らしい戦いぶりを、解説席に座る六花が慈愛に満ちた笑顔で見守っていた。
「ファーストゲームは須藤選手が取りましたね。終始須藤選手が主導権を握っていた試合に見えましたが?」
「彩花の主なプレースタイルは相手の弱点や癖を徹底的に分析して、ねちっこく突くという物です。私の現役時代と同じプレースタイルですが、完成されたオールラウンダーの隼人君には弱点らしい弱点が存在しません。」
「その相性の悪さが、ファーストゲームの結果に出てしまったと?」
「そうですね。ですが…。」
とても力強い笑顔で、六花は彩花の事を見つめながら、はっきりと宣言したのだった。
「皆さんからは親馬鹿だと言われるかもしれませんが、どうか彩花の事を見守ってあげて下さいね。ここからが彩花の真骨頂ですよ?」
そして六花の解説通り、セカンドゲームでは彩花の猛反撃が始まるのである。
「セカンドゲーム、ラブオール!!平野中学校3年・藤崎彩花、ツーサーブ!!」
「さあ、反撃開始だよ!!ハヤト君!!」
セカンドゲームでは一転して、試合の主導権を終始彩花が握っていた。
オールラウンダーとしての驚異的な粘りを見せる隼人だったが、彩花のねちっこい攻めの前にコート上を何度も何度も走らされ、情け容赦なくスタミナを削られていく。
ファーストゲーム同様、得点こそ互角。だが余裕があるのは彩花の方だった。
弱点らしい弱点が存在しない、完成されたオールラウンダーの隼人。
ならば彩花の方から、隼人の弱点を作ってやれば済むだけの話なのだ。
「ゲーム、平野中学校3年・藤崎彩花!!17-21!!チェンジコート!!」
「ぶいっ!!」
見事にセカンドゲームをもぎ取り、星を五分に戻した彩花が、解説席の六花に対して笑顔でピースサインを見せる。
その愛娘のドヤ顔を、六花は慈愛に満ちた笑顔で見つめていたのだった。
「須藤選手にファーストゲームを取られた藤崎選手ですが、即座にセカンドゲームを取り返しましたね。」
「隼人君は確かに完成されたオールラウンダーで、弱点らしい弱点は存在しませんが、それでも無尽蔵のスタミナを持っているという訳ではありませんから。」
「その疲労によって須藤選手に生まれた弱点を、藤崎選手に見事に突かれたと?」
「この試合に負ければ全国への道が断たれてしまいますし、しかも相手は彩花です。そんな緊迫した試合で隼人君は、既に40分近くもコート上を走り回っている訳ですからね。いくら隼人君でも全く疲れない訳がありませんよ。」
全く持って六花の解説通りだったもんだから、隼人は思わず苦笑いしてしまう。
確かに隼人のスタミナは、もう既に限界が近くなっている。
六花は彩花が相手の弱点を突くプレースタイルだと解説していたが、実は既にファーストゲームの時点で、隼人は彩花の術中に嵌ってしまっていたのだ。
技を放つ際は闇雲に放つのではなく、そこに至るまでの道筋を考えながら打ちなさい。
相手の弱点が分からないのなら、こちらから弱点を作りなさい。
これらの六花の助言を彩花は、この準決勝の舞台で有言実行しているのである。
クレセントドライブを前後左右に散らして隼人のスタミナを削り、シャドウブリンガーの威力によって隼人のラケットを何度も吹っ飛ばし、左手の握力を弱める事にも成功した。
ファーストゲームは隼人に取られてしまったが、それさえも彩花の想定内。
そう、しつこく隼人にまとわりつくように、ねちっこく、ねちっこく、ねちっこく。
彩花は少しずつだが確実に、隼人の身も心も削っていたのだ。
こうして敵として対戦してみると、隼人は改めて思い知らされる。
オールラウンダーである自分の正統派のプレースタイルとは全くの対極の、バドミントンプレイヤーとしての彩花の「嫌らしさ」「ねちっこさ」を。
だが、それでも。
隼人とて、伊達に周囲から『神童』と呼ばれている訳では無いのだ。
「ファイナルゲーム、ラブオール!!平野中学校3年・須藤隼人、ツーサーブ!!」」
「さあ、決着を付けようか。彩花ちゃん。」
ファイナルゲームでは彩花の執拗な攻めに決して屈せず、凄まじい粘りを見せる隼人。
確かに隼人のスタミナは、もう限界が近い。
だが彩花が六花から徹底的に鍛えられて来たように、隼人もまた美奈子から徹底的に鍛えられているのだ。
それは技術的な指導だけでなく、この逆境の状況からでも対戦相手に立ち向かえるような精神力と、何度叩きのめされても何度でも立ち上がれるような粘り強さもだ。
「10-8!!」
そして彩花もまた息を切らしながらも、とても充実した笑顔を見せていたのだった。
ああ、やっぱりハヤト君と打つのは凄く楽しいな、と。
クレセントドライブで隼人を何度も縦横無尽に走らせても、それでも隼人は諦めずに食らいついてくれる。
シャドウブリンガーで隼人のラケットを何度吹っ飛ばしても、それでも隼人は何度でも立ち上がってくれる。
「15-13!!」
そしてそれは隼人も同じであり、彩花との試合を存分に楽しんでいたのだった。
そう、六花が2人に言っていたように、バドミントンは楽しく真剣に。
隼人も彩花も目の前の強敵との試合を存分に楽しみ、そして真剣にプレーしているのだ。
「20-18!!」
だがどんな物にも、いつか必ず終わりという物が訪れる。
いよいよ隼人のマッチポイント。この最高の試合も終わりの時が近付いているのだ。
互いに嬉しそうな笑顔で息を切らしながらも、隼人が渾身のサーブを彩花に放つ。
それを返す彩花。それをさらに返す隼人。
常人には目で追い切れない程の凄まじいラリーの応酬が、2人の間で繰り広げられている。
そのラリーの最中に彩花の目に映った、もうヘトヘトの隼人が見せた一瞬の隙。
クレセントドライブか。シャドウブリンガーか。
どちらで行くべきなのか。どちらが確実なのか。
隼人の実力を分かっているが故に、彩花の心に一瞬の迷いが生じてしまっていた。
「…てええええええええええええええええええええい!!」
そんな中で彩花が選択したのは、漆黒のスマッシュのシャドウブリンガー。
もう、あーだこーだ考えるのは止めて、今のヘトヘトの隼人を力尽くで捻じ伏せる事にしたのだ。
だがそれを事前に予測していたかのように、隼人は既に両手でラケットを握っていたのだった。
自分が今ヘトヘトだからこそ、シャドウブリンガーで無理矢理捻じ伏せにくるだろうと。
その彩花との読み合いを見事に制した隼人が、漆黒の光に包まれたシャトルを逆に力で捻じ伏せる。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」
この試合最終盤においても、全く衰えていない彩花のシャドウブリンガーの威力。
何という彩花の凄まじい身体能力、そして精神力なのか。
それでも隼人は見事にそれを打ち破り、強烈な威力のスマッシュを彩花のコートに弾き返したのだった。
力無く落下したシャトルが、彩花のコートのラインギリギリに落ち…そして。
「ゲームセット!!ウォンバイ、平野中学校3年・須藤隼人!!スリーゲーム!!21-17!!17-21!!21-18!!」
「よっしゃああああああああああああああああああああああ!!」
彩花との死闘を制し、派手にガッツポーズをする隼人。
対称的にがっくりと肩を落とし、うなだれる彩花。
この瞬間、隼人の決勝進出と全国大会への出場、そして彩花の予選敗退が決定した。
勝負の世界である以上、勝者が生まれれば敗者も生まれるのだ。
これが決勝戦だったならば勝敗に関係無く、彩花も隼人と一緒に全国大会に出場する事が出来たのに。
だが彩花に悔いは無い。全身全霊をもって隼人と戦い、隼人もまた全身全霊でもって応じてくれたのだから。
確かに隼人に負けたのは悔しいが、それ以上に彩花はこの試合、とても楽しかった。
「お互いに、礼!!」
「「有難うございましたぁっ!!」」
互いに疲労が限界に達して、もうヘロヘロになってしまっているが、それを周囲に感じさせない充実した笑顔で、互いに握手をしながら見つめ合う隼人と彩花。
そんな2人の光景を六花は、とても慈愛に満ちた笑顔で見つめていたのだった。
「藤崎六花さん。この試合の藤崎彩花さんの敗因は、どう分析されますか?」
「そうですね。最後のプレーに関しては、彩花に一瞬の迷いが出ていましたね。」
「と、言いますと?」
「クレセントドライブで崩すのか、シャドウブリンガーで捻じ伏せるのか。どちらも立て続けに攻略してみせた隼人君の凄まじい粘りの前に、どちらで行くのが正解なのかを見出せないまま、闇雲にシャドウブリンガーを撃ってしまった結果、返されてしまった…それを私は感じました。」
あまりにも六花が的確な解説をするもんだから、ぐうの字も出ない彩花。
「ですが彩花に迷いを生じさせてしまう程、隼人君の粘りが凄まじかったという事なのでしょう。親馬鹿だと批判されても仕方がありませんが、彩花は責められませんよ。」
隼人も彩花もヘトヘトになりながらも、自分たちの試合を的確に解説し、そして温かく見守ってくれた六花を真っすぐ見据えている。
「それに隼人君も彩花も、どちらが勝ってもおかしくない、本当に素晴らしい試合を私たちに見せてくれました。皆さん、どうかこの2人に盛大な拍手と声援をお願いします。」
そして六花からの呼びかけによって、観客席から放たれた凄まじい声援と拍手が、死闘を演じたばかりの隼人と彩花を包み込んだのだった。
「よくやった!!須藤!!藤崎!!感動した!!」
「今大会一番のベストバウトだったぞ!!負けたとはいえ藤崎も素晴らしかった!!」
「必ず全国3連覇を成し遂げてくれよな!?須藤!!」
死闘を戦い抜いた隼人と彩花だったが、それでもこれで終わりではない。
隼人には決勝戦が、彩花には3位決定戦が残されているのだから。
だからこそ、次の準決勝第2試合が行われている間に、隼人も彩花もしっかりと休息を取って、万全の状態に戻さなければならないのだ。
「よ~し、じゃあ約束通り、今度の日曜日に僕にハンバーグカレーを奢れよな。彩花ちゃん。」
「うん、いいよ。」
だが次の瞬間、彩花は解説席の六花の下に、とてとて、とてとて、と、飼い主を見つけた猫みたいに走り出したのだった。
いきなりの彩花の行動に、意味が分からないといった表情の隼人だったのだが。
「ねえねえ、お母さん。」
「なあに?どうしたの彩花?」
「あのねあのね、ゴニョゴニョゴニョ…。」
ヘッドホンを外した六花に対して彩花が耳打ちして、何やら隼人には内緒の話をし出したのだった。
「…ふふふっ、分かったわ。ハンバーグカレーね?」
「うんっ!!」
そして穏やかな笑顔で、彩花に頷く六花。
一体何を話しているんだろうと、仲睦まじい母娘の光景を見つめていた隼人だったのだが。
「…うふっ(笑)。」
「?」
そこへ突然六花に笑顔でウインクされて、一体2人で何を話していたのかと、戸惑いを隠せない隼人なのであった…。
その後、彩花と隼人は、それぞれ3位決定戦と決勝戦を圧倒的な強さで勝利。
表彰式で彩花は銅メダルを賞状を、隼人は金メダルと賞状とトロフィーを授かり、2人共爽やかな笑顔でそれらを高々と掲げ、観客がそんな2人に大声援を送ったのだった。
かくして全日本中学生バドミントン大会の県予選は、隼人が優勝、彩花が3位という結果に終わり、隼人が愛知県代表として全国大会に出場する事になった。
六花以来誰も成し遂げていない、全国大会3連覇。それを隼人は実現する事が出来るのだろうか。
それでも隼人はそんな物は関係無しに、全国大会という最高の舞台を、彩花の分まで精一杯楽しく、そして真剣にプレーしようと…そう心に決めていたのだった。
だがドルフィンズアリーナが、優勝した隼人への祝福の声に包まれている最中。
「藤崎彩花君が予選敗退だと…!?藤崎六花君は一体何をやっていたのだ!?」
その様子を来賓席から観戦していたJABS名古屋支部の支部長が、とても不満そうな表情で睨みつけながら、歯軋りをしていたのだった…。
次回。ハンバーグカレー。




